薪ストーブの性能を引き上げるための最後の砦

薪ストーブの性能を引き出す秘訣は「炉内を高温に保つこと」だ。極めて単純なことだけど、意外と難しい。
・薪の乾燥を重視するのは水分による気化熱で炉内の熱が奪われないため
・二重断熱煙突で真っすぐな配管にするのは排気温度を維持して、空気を絞っても燃焼させるため(空気で炉内を冷やさない)
薪ストーブは耐熱ガラスから炎が見えるのが魅力の一つだけど、実はガラスから熱が室内側に逃げて炉内の温度が下がっている。
それを防ぐための方法は二つある。
一つ目は耐熱ガラスをペア(二重)にすることだ。かつてこのタイプのモデルもネスターマーチンにあったけど、コストアップの分を吸収維持できなかったらしく、短い期間でシングルに戻してしまった。
二つ目の方法として、通常の耐熱ガラスではなく特殊な熱反射ガラスを採用することだ。これはガラスに金属をコーティングして熱を炉内の熱を反射させて戻す仕組みだ。現在では、一部のメーカーでこの方法を使っている。
前者を真似する場合には、耐熱ガラスそのものは比較的安価だけど、ガスケットのつけ方や固定方法などが難しい。固定金具を自作しないとならなかったり、下手をするとずり落ちて割ってしまったりするリスクがある。
比較的簡単なのは後者の方法で、純正の耐熱ガラスを同じ厚みの熱反射ガラスに交換するだけだ。
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パッと見は普通の耐熱ガラスに見えるけど・・・
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断面を良く観察すると、一面側にマジックミラーのように金属が蒸着してコーティングされていて熱を炉内に反射する仕組みが判る
この写真だと上が室内側で、下が炉内側で、取り付けの際には方向性があるので気をつけよう。
熱反射ガラスの威力は絶大で「明らかにガラスに付着する煤の量が減る」「いつもより空気を絞っても良好な燃焼をして薪が長持ちする」などの効果が「そういう気がする」とかいうレベルではなく、誰にでも、はっきりと効果が体感できるものだ。
しかし、問題はコストだ。熱反射ガラスは、とても高価だ。欧米の薪ストーブメーカーが何百枚何千枚という生産台数でのロットで注文すれば一枚あたり2-3万円程度になるけど、数十枚程度のロットでは一枚あたり3-4万円程度だろう。多くの薪ストーブメーカーで採用している熱反射ガラスはコスト優先で、耐熱温度、コーティングしている金属の種類や成分によって、光の反射で緑色に見えてしまうものが多い。透明に見える最高級のものを、個人が一枚だけ注文するとなると・・・・試しに見積もりしてみたら約9万円だった。
ちょっと気軽に購入できる価格ではないけれども、最高の性能を追求したい場合には、検討する価値がある。
岡本AGNIも純正状態では普通の耐熱ガラスだけど、開発中の時にメーカーで使った熱反射ガラスを借りる機会があって、試しに交換してみたけど、激変した。
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青白いオーロラ炎が、純正状態より、さらに安定して長時間出るようになる
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空気をかなり絞っても、翌朝、ほとんど判らないレベルの煤けになった
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拭かなくても外側から見たらほぼ透明で判らないくらいだけど、ガラス全部をきっちりと濡れティッシュで拭いて、たったこれだけの汚れ
AGNIの純正の耐熱ガラスの時は、上手く焚いたつもりでも、ドブレ700SLと比べるとやや煤けが多く、翌朝、拭かないとちょっと次の焚付の時に気になる程度だったけど、熱反射ガラスに交換したら、数日間は拭かなくても全然気にならないレベルになった。また燃焼効率も良くなって、空気をより絞ることができて燃費も向上した。
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コメント

  1. 山口透 より:

     ネスターマーチン、ペアガラスやめていたのですね。
     ノザキ2300の話になりますが、うちでは去年、全面下部からサーキュレータで窓に風あてて、熱利用効率を高めていました。元々1次空気も良くプレヒーティングされる設計になっていて、その温度が薪にあたる頃に適度に低くなるせいか、逆に1次燃焼は下火になり、2次燃焼が盛んとなり、絞り易くなりました。
     もっとも、セラミックウール用いてストーブ背面の断熱をしているので、ガラス冷却よりその分の保温効果の方が当然大きいでしょう。
     で、ガラス遮熱で炉内温度が上がって絞り安くなるストーブも多いのは理解出来ますが、ストーブの前で放射熱を浴びる心地よさの減少はどの程度でしょう?
     また、背面断熱に比べ、メリットはなんでしょう?

  2. かわはら より:

    山口透さま:
    そうなんです。孤高の設計だと思っていたら、がっかりです。
    仮にガラスからの放射熱が少なくなっても、それほど極端に薪ストーブからの放射熱が減るわけではありません。ガラス以外のボディそのものからの放熱の方が圧倒的に表面積が大きいからです。
    背面断熱以上に、ガラス面の断熱効果は大きいからです。住宅でもガラスから逃げる熱の方が、壁面から逃げる熱より多いのと同じです。

  3. 山口透 より:

     ガラスはも炉内の放射熱をほぼそのまま通過させてしまうので、熱伝導度は鉄より低くても、ガラス面からの放熱量が大きそうですが、背面が高熱になるタイプでは、背面からの放熱量の方が大きくなります。
     センサで計測したわけではありませんが、セラミックウールで背面断熱したのと、(実用は出来ませんが)ガラスを断熱したのでは、明らかに、背面断熱の方が、ストーブ温度が実際に高く維持できます。

  4. かわはら より:

    山口透さま:
    最近の多くの機種は炉内背面をバーミキュライトなどで断熱の上、ヒートシールドで二重に断熱しているので、あまり背面からの放熱は多くありません。
    背面が高熱になるタイプは稀で例外に近いと思います。
    それに背面が高熱になると言っても、ガラスよりは断熱性があると思います。ガラスと背面ではガラスの方が断熱の効果は高いと思われます。

  5. 山口透 より:

     確かに、炉内背面バーミキュライトを石に交換してからの実験でした。
     尚、ガラスと鉄では遙かにガラスの方が熱伝導度が低いですが、ガラスのが断熱性が無いと言うのは、炉内赤外線放射熱のエネルギーの方が非常に大きいと考えて良いわけですね。

  6. かわはら より:

    山口透さま:
    おっしゃる通りです。