薪ストーブの導入を検討されている方は、メーカーや機種を吟味するのに集中しがちです。

もちろんこれから来る素敵な薪ストーブライフにこころ踊らせていることでしょうから、それも当然です。

しかし薪ストーブ本体だけでなく「薪」のこと、特に薪ストーブのある生活を長く続けていくためには避けて通れない「薪集め」のことを考えられている方はどれほどいらっしゃるでしょうか。

もちろん薪を作成するには木を集めただけではダメです。
「割って」「風通しと日当たり」が良く、「屋根があり雨の当たらない」場所で「1年から2年程度」乾燥させてやらないといけません。

ですので先述した「薪を購入する資金がある人」を別として、導入を考えられている方は薪ストーブ設置予定の1〜2年前から薪集めを開始するのが理想です。

そして薪ストーブの導入が完了しても薪集めをやめてはいけません。

なぜなら、薪ストーブで焚いて減った分だけ集め続ければ、毎年1〜2年乾燥の薪を遠慮なく焚くサイクルが出来るからです。

焚ける薪が少なることで起こる弊害

シーズン途中で焚く薪の在庫が少なくなりますと、焚き方もケチケチちびちびとチョロ焚きで済ませなんとか消費量を抑えようとします。

こういう充分に温度が上がらない焚き方をされますと

  • 煙や煤を出しやすい
  • 薪ストーブなのに暖かくない

というストレスの多い毎日になってしまいます。

1シーズンに必要な薪の量

薪棚の例
考えていた以上に大量の薪が必要だということも、実際に毎日使ってみないと実感しにくいでしょう。

お住いの地域や住宅性能、家の広さや使用頻度に依るところが大きいですが、1シーズンに4〜6トンの薪を消費されるご家庭が多いです。
もちろんそれ以上少ない方も多い方もいらっしゃいます。

これは

「何らかの方法で4〜6トンの薪を自宅の敷地へ運び込み、さらに薪ストーブまで運んでくべなければいけない」

ことを意味します。

新築への薪ストーブ導入をお考えの方は、”それほど大量の木が敷地内と家の中を移動するんだ”、ということを頭に入れておいてください。

このことを充分考慮いただいたうえで「敷地と屋内におけるムリがない薪の搬入動線」を家の計画段階で設定しておくことがとても重要です。

考慮すべきポイントには以下があります。

  1. 「1シーズン分以上の」薪を保管する薪棚の場所
  2. 車から薪を降ろす場所
  3. 降ろした薪を薪棚まで運ぶ導線
  4. 焚く直前に薪を一時保管しておく場所
  5. 外から取り入れた薪を薪ストーブへス運ぶスムーズな導線

これらをキチンと押さえた設計をするかどうかが、その後の薪ストーブライフの快適度や使い勝手が大きく左右します。

設計に関していうと、「煙突掃除しやすい設計」というのも重要です。

煙突掃除は基本的に毎年おこなう必要があります。

  • 自分で屋根に上ってトップを外して、そこからブラシを入れられる設計

これを考慮する・しないで導入後のメンテナンス費用、維持費が大きく違ってきます。

  • 屋根の勾配
  • 屋根へのアクセスルート

を慎重に検討しましょう。

煙突掃除は室内側、煙突の下から入れたブラシで煙突内部に付着したススをこすり落とすことを「煙突掃除」と認識されていらっしゃる方もいます。

しかしそれでは「煙突内に付着した煤が発火することによって起こる煙道火災」の予防にはまったくなりません。

いくら煙突内部をきれいにしても、煤がもっとも付着するのは排気温度が低くなる煙突トップ付近だからです。

この部分に付着した煤は物理的にも煙突上部から掃除しないと除去できません。

煙突トップに付着した煤を放置しておくと、付着した煤(タール)の上にさらに煤が溜まり、それを数年繰り返すことで

  • 煙突の詰まり
  • 剥がれた煤が近所に飛び散って近所迷惑になる

リスクが高まります。

それよりもっと怖いのは煙突内部に溜まった大量の煤(タール)が発火することで起こる「煙道火災」でしょう。

その温度は1,000度にも達し、煙突貫通部から住宅の木部が発火し住宅火災を引き起こすこともあります。

ご自身やご家族だけでなく、ご近所さんの命にも関わりかねません。

これから導入される方も現在ご使用中の方も、薪ストーブの使用と煙突掃除はセットでお考えください。

当店は煙突掃除にも豊富なノウハウがございますので、お家の設計段階からお話を頂ければ最適なアドバイスを差し上げることが出来ます。

急勾配の屋根だと煙突掃除が大変 煙突トップにアクセスしやすい家の設計 温度の冷えるトップ部分に煤が付着する 剥がれて飛散すると近所迷惑になる

炉台の広さも使い勝手を大きく左右する

薪ストーブ設置にあたり、「薪の確保」同様「炉台のサイズ」も考慮されていないことが多く見受けられます。

限られた住宅スペースでは各スペースによる奪い合いが起こります。

結果薪ストーブはその陣地争いに敗れ、

「とりあえず薪ストーブが乗れば良い」

程度しかスペースを与えられず、「使い勝手」などまるで無視され適当に設計されていることがわかる実例が多く見受けられます。

快適な薪ストーブライフには広い炉台が必要

炉台には薪ストーブを置く台としての機能だけが求められているのではありません。

  • 扉を開けた際に爆ぜた火の粉が飛ぶ
  • 同じく火のついた薪が転がり出し床を焦がす

ことを防ぐ重要な機能もあるのです。
上記した2点は日常的に起こる「よくあること」なのです。

さらに炉内料理した際に出したダッチオーブンやスキレットなどを置く「台としての機能」もあります。

もちろん「これから焚く薪」や火かき棒や火箸、五徳など「薪ストーブ関連の道具」を置いておく必要もあります。

「炉台は広ければ広いほどいい」ものですが、限られたスペースを割り振るにも限度があります。

具体的には、「薪ストーブの周囲に60センチ程度のスペースを作れる炉台」にすると薪ストーブの使い勝手が大きく損なわれることもないでしょう。