ドブレ社のロングセラーモデル760CB/640CB。
ドブレ社他モデル同様この機種にも「考え抜かれた合理的でシンプルな設計」がなされています。
メンテナンスが必要なパーツは極力ボルトで固定されず、工具無しで容易に取り外し出来るのもその1つです。
部品を固定しないメリット
部品がボルトやネジで固定されているタイプですと、何百度という高温で使用される薪ストーブでは焼きついて固着したネジやボルトを取り外す際切れてしまうことがあります。
同じく高温に晒される自動車やバイクのエンジンを分解するときにも同様のことが起こりますよね。
焼き付いたボルトを切らないように外すのは初心者や普段道具をあまり使わないユーザーには厳しいでしょう。
脆くなったボルトに無理な力が掛かり切断されてしまうと、修理に余計な手間と時間、費用がかかってしまいます。
しかし、760CB/640CBですと心配することなく初心者でも安心して気軽に分解と清掃ができます。
厳しい環境で長期間使われる薪ストーブにとって、この設計はありがたいです。
初心者ユーザーにも優しい親切な設計
「ストーブを長持ちさせるため錆びないよう灰を取り除きキレイにする」
だけなのに「ストーブを壊してしまうこと」や「修理代にビクビク」しながら作業しないといけないのはバカらしいですよね。
しかし760CB/640CBですとこのリスクは大幅に削除されるのです。
- ユーザーが簡単にメンテナンス出来る
- 万一のパーツが破損した場合でも容易に交換ができる
という大きなメリットがあるからです。
このおかげで
- ストーブ屋さんに払う工賃が不要
- 出張料も不要
- 面倒なスケジュール調整が不要
になります。
使いやすい、高性能なのは当たり前。
加えてメンテナン性まで考慮され長期に渡って安心して使える設計になっているのがこのモデルに限らずドブレ社製品の特徴です。
考え抜かれた設計
炎が直接当たるバッフル板も同様です。
ご覧のように瓦のようなパーツが二枚組み合わさって炉の上部に引っかかっているだけです。
ただ上にポンと乗っているだけですが、気密はパーツ自体の重さと本体側のガスケットで確保されています。
精度の高い鋳物パーツの組み合わせで構成されていますので、ボルトや耐火セメントで天板を固定する必要がありません。
また、部品が固定されていないメリットには「鋳物が熱による伸び縮みのストレスを受け難い」こともあります。
部品がボルトで固定されていると、その部分を基点にパーツが伸縮し、ストレスで破損する場合があります。
部品の伸縮を邪魔しない設計により、耐久性も良く寿命も長くなるのです。
特徴的なバッフル板の形状
このバッフル板は二次燃焼噴出し口に向かって(奥に向かって)湾曲していますが、その形状も秀逸でカーブが邪魔になることがありません。
そしてこのカーブが二次燃焼を効率よく促進し燃費を良くし、結果としてゆっくり燃える綺麗な炎を創り出すのです。
他の部品にも見られるドブレの技術力
バッフル板がネジやボルトなどで固定されていないように、ドブレ640CB/760CBは他のパーツも取り外しは簡単です。
大きなパーツでも「一枚モノ」でないことが良く観察すれば確認できるでしょう。
先述のバッフル板もパーツが分割されているお陰で大きさ・重さともに扱いやすくなっています。
このように「ぴったり組み合わせられる」パーツを鋳物で作成できるところに、ドブレの技術力の高さが現れているのです。
湾曲しているが薪もたっぷり入る
上部は湾曲していますが、写真のように薪もたっぷり入ります。
通常使用する分には火室の容量を気にすることもないでしょう。
760CB/640CBのしくみ(上部)
もう少し詳しく760CB/640CBの機構を見ていきましょう。
耐火煉瓦と先述のバッフル板を取り外せば、「二次燃焼の噴出し口」が良く見えます。
二次燃焼の空気調整は本体下部、右側のレバーで操作します。
そして噴出し口上部に排煙の流れを整える整流パーツがあります。
スムーズな排煙と燃費向上を両立させるため、形状も美しく丸みを帯びています。
このように目に見えないパーツまで丁寧に作りこまれており、無駄がない合理的な設計になっています。
当然このパーツもちょこっと持ち上げて前方に引き出してやれば簡単に取り外すことができます。
760CB/640CBは煙突掃除も容易
この仕組みのお陰で、煙突掃除の際に煙突をいちいちばらす必要が無くなります。
煙突に付着した煤をストーブの中に落とし、このパーツの内部に溜まった煤を取り除けば効率的にキレイになるでしょう。
結局シーズンが終われば灰の掃除で薪ストーブを分解しますから、同時にやってしまえば作業効率が良いでしょう。
760CB/640CBのしくみ(下部)
上部に続き、ノウハウと技術が詰め込まれた下部も見ていきましょう。
これをみればよりドブレの知見と技術を理解頂けると思います。
灰を断熱材として利用する炉床
760CB/640CBの炉の底の部分は平らではなく網目状の凹みが大量にあります。
この窪みは灰を掃除しても必要な灰が炉内に残るよう設けられているのです。
残された灰は断熱材として利用され、熾き火の持ちを良くさせます。
この網目のおかげで「灰をこのくらい残しておかなければ」とユーザーが灰の残量を考えなくても良くなりました。
薪ストーブ初心者でも最低限必要な量が自動的に残るようになっているからです。
そしてもちろんこのパーツも固定されているわけではなく、上に持ち上げるだけで簡単に取り外すことができます。
シーズンオフに灰を炉内に残しておくと湿気を呼び込んで錆びの原因となりますが、メンテナンス時にこのパーツを取り外し屋外でひっくり返して刷毛で掃除すれば完全に灰を撤去することができます。
一次燃焼用空気取り入れ口
このパーツを取り外すと灰受け皿が納まる部屋が丸見えになります。
左側の下部に空気取り入れ用の四角い孔が開いているのが確認できるでしょう。
その孔を覗き込むと、外側に空気調整の弁が見えます。
これが一次燃焼用の空気の取り入れ口です。
本体前面左側の空気調整レバーとこの弁が直結していています。
一次レバーを動かすと、弁が動くのでメンテナンスの際にチェックしてみると面白いと思います。
煙突の背面出しも可能
ドブレ760CB/640CBは煙突を背面から出すことも可能です。
その際煙突は「横引き」になります。
ですが、実際そのパターンで設置されるケースは少なく、天板から上に煙突を立ち上げるケースが圧倒的に多いです。
「煙突背面出し」の特徴として、「室内に煙突が全く見えずにオシャレですっきりした印象となる」ことが挙げられます。
使わない背面の穴は塞ぐ
天板から上に煙突を出す場合、背面からの煙突取り出し口はふさぐ必要があります。
以前は鋳物の周辺のデザインに溶け込む形状のオシャレな蓋だけで、「直接鋳物の熱が後ろに放出されてしまう」という問題がありました。
しかし現在ではその対策のため平らな天板用の鋳物の蓋になり、その外側に鉄板のヒートシールドを一緒に固定する仕様へと変更されています。
この変更で背面への熱の放出がだいぶカットされるようになりました。
760CB/640CBでドブレ社の豊富な経験と技術の高さがわかる
このように初心者でも問題なく利用できる「考え抜かれた設計」、「メンテナンス性の良さ」は特筆できます。
永年の薪ストーブメーカーとしての経験、知見とそれを実現する加工精度の高さが760CB/640CBには現れています。
760CB/640CBのメカニズム
ドブレのロングセラーモデル760CB/640CBを見ると「ドブレのメーカーとしての考え方や技術力」がよくわかり、なぜ長年に渡り世界中で売れ続けているのか、がよくわかります。
今回はご紹介できませんでしたが、初心者でも直感的に操作がわかる人間工学的に優れたユーザーインターフェースなど、ユーザーフレンドリーな側面は多々あります。
実機を触る機会がありましたらその精度の高さと徹底的な合理性をご体感ください。
760CB/640CBでする料理に関しては以下で詳しく説明しておりますので是非お読み下さい。
現在では640CBJ/760CBJは廃盤となり、入手不可能です。後継モデルの640WD/760WDについては構造が全く異なり、ビンテージと似たような特徴となっています。
640CBJ/760CBJの分解性、メンテナンス性を求める場合には、OEM供給されたセガン社のブランドにて購入頂くことが可能です。それについては以下をご覧ください。