Categories: 薪集め

薪の太さについての考察

「太い薪の方が火持ちが良い」「太い薪の方が立派」というふうに誤解している人が極めて多い。

本当のところは、「太い薪だと、完全燃焼せずに燻ぶっていてゆっくり燃えている」だけで、必ずしも火持ちが良いわけではない。翌朝、燃え残りの薪の塊や、消し炭のような塊が残って消えていたりする炉内を、たまに訪問先やネットの写真で見かけるけど、それが典型的な太過ぎる薪の弊害を端的に具現したものだ。火種は残っているかもしれないけど、燃焼中に煤や煙が大量発生してガラスも炉内もタールや煤けているし、煙突内にも煤が大量に付着している。本来であれば燃えて熱に変換される成分が、燃えきれないで煤やタールで無駄に捨てているということだ。翌朝の残りの薪の塊は場合によっては、煙を上げているかもしれないけど、ここから再着火させることは極めて困難だろう。温度が下がって、完全に種火が消えてしまっているケースも多い。

薪作りの際に、ユーザーが自分で作っている場合も、業者が仕事として作っている場合でも、太ければ太いほど割る手間が省けて、楽で短時間の作業になるということで、ついつい安きに流れるというのが実情だろう。薪割りしていて、疲れてくると自然に太割りが多くなってくる経験や、太い丸太を割っていると、つられて太く割ってしまうことは、自分で薪作りをしている人であれば、誰しもあるだろう。

適切な薪の太さであれば、炉内で高温で完全燃焼に近い燃え方をする。本来の薪が持つエネルギーを熱として、完全燃焼に近い形でしっかりと回収できた状態だ。二次燃焼での燃焼中は、煤も煙もほとんど発生しない。翌朝の炉内には、灰の中に赤い熾火がしっかり残っている。ガラスも綺麗で煤けていない。実際、この熾火だけからの翌朝の焚きつけも可能なので、朝まで火持ちしていると言える。

灰の中に赤い熾火がまだ残っている

それでは具体的には、どの位の薪の太さが最適なのだろう。私は一辺が8センチ程度の正方形に近い形状の断面で、長さは30センチから35センチ程度が良いと考えている。太過ぎる薪、長過ぎる薪は完全燃焼しないので、本来の薪の持っているエネルギーを取り出せない。

太さだけでなく長さについても言及しているのも理由がある。よく薪ストーブに入るギリギリの長さので作りがちだけど、それもチェーンソーでの玉切り作業の手間を減らしたがることと関連がある。薪は、高温で燃やさないと完全燃焼しない。長過ぎる薪は炉の中央部の高温の部分から離れたところで燻ぶりがちなのだ。より、高温で、完全燃焼させるためには、炉の中心付近の高温の場所に存在していた方が良いのは自明の理だ。

また、長過ぎる薪だと炉内で自由に組めない。薪は炉内での空気の流れを考えて、組み合わせてくべることが重要だ。短ければ、炉内の状況に応じて、自由に組み合わせてくべられるので、効率良い燃焼を作れる。

薪ストーブの極意は、炉内温度を「煙が燃えることができる温度まで上げた状態」で、空気を絞って、「薪ではなく、薪から発生した煙を少ない空気で効率良く長時間燃焼させること」だ。適切なサイズの薪を組みあわせれば、容易にその状態が作れる。

太過ぎる薪だと、物理的にそのような状態にならないので、低い温度で薪だけが燻ぶって燃えることになる。

悪い薪の断面のサイズ

太過ぎる薪が一辺が16センチ、長さ35センチだとして、その表面積を計算してみよう。小型ストーブだったら炉内にギリギリ1本入るか入らないかというサイズだ。

断面の面積 16×16×2=512cm^2
割った面の面積 16×35×4=2240cm^2
—————————–
薪一つ辺りの表面積 2752cm^2

良い薪の断面のサイズ

その薪を2回割って、4分割したサイズが私が推奨している一辺が8センチ、長さ35センチの薪だ。その表面積を計算してみよう。

断面の面積 8×8×2=128cm^2
割った面の面積 8×35×4=1120cm^2
—————————–
薪一つ辺りの表面積 1248cm^2

これが4個なので、4992cm^2となる。

つまり、同じ容積、質量だとしでも、炉内で燃えることのできる表面積は2倍程度、適正の薪の方が、太過ぎる薪より大きいということになる。適正サイズの薪の方が、炉内で空気に触れる面積が2倍あるので、2倍の可燃性ガスを発生させることができる。単位時間辺り、発生する熱量も2倍となり、煙が燃焼できる二次燃焼の温度域まで炉内温度を上げることができるようになる。

どちらも同じ容積、重量なので、本来の薪が持つエネルギー量は等しいが、太過ぎる薪の場合は前述の通り、頑張っても二次燃焼できる温度域に達することができずに低温で燻ぶるので、エネルギーを煤や煙やタールとして燃焼させずに無駄に捨てている。適正サイズの薪は完全燃焼に近い形で燃えて、エネルギーを熱として回収しているということになる。

また、太過ぎる薪の場合は、薪の内部まで乾燥が進んでいない傾向が大きいので、燃焼に伴う熱の発生時に、薪の内部からの水分の蒸発で炉内の熱を奪い、悪循環で温度が上がる速度が遅くなる。

このように、太過ぎる薪は「百害あって一利なし」と断言しても良い。

薪作り、薪の購入時でも、薪の断面サイズが1Lの牛乳パックや350mlのビールのサイズを超えていたら問題があると考えた方が良い。一辺8センチと数字で言ってもイメージがつかめないのであれば、比較できる一般的な商品パッケージが手元にあれば一目瞭然だろう。もし手元に商品パッケージがない場合は、自分の身体のパーツのどこか(例えば手のひらサイズとか、指の長さなど)を定規代わりにしてやると、確認できる。

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