よく言われていることだけど、「触媒機は燃費が良い」とか「触媒機は排気がクリーン」という説明がある。しかし、その言葉を真に受けているだけでは、目的に適合した正しい機種選択の判断ができない。
結論から先に言うと「燃費の良さ」も「排気のクリーンさ」も、触媒とかCB(クリーンバーン)とかの仕組みの違いによるものではなく、乾燥した薪を高温でしっかり焚けるかかどうか」で決まってくる。乾燥不足の薪をチョロチョロ燃やしたら、どんな凄い機構がついていたって、煙モクモク、煤が大量付着する。逆に、触媒もCBもついていないホームセンターの激安の薪ストーブだって、薪の質と、煙突の工夫、焚き方次第では、煙も煤も少なく、それなりに燃費良く焚くことが可能だ。カタログスペックの差なんて、焚き方次第で一発で逆転する。車と同じで、免許取り立ての初心者が高級車を運転するより、ベテランドライバーが大衆車を運転した方が、スムーズにきびきび走れるというたとえで考えると理解しやすいと思う。
※「住宅地だから煙や煤を絶対に出したくない」という場合には薪ストーブの性能の違いより、薪の性能(つまり乾燥具合、適切な形状)などの方がはるかに結果に与える影響が大きい。
しかし、その結論で終わらせてしまっては今回の記事のテーマの「CB機と触媒機の比較」にならない。一歩進めて、仮の前提条件で「同じ乾燥具合、同じ重量の薪を、上級者が高温で理想的な状態で焚いて、CB機と触媒機の、それぞれの薪ストーブの本来の性能をフルに発揮させることができたら・・・」という場合での比較をしてみよう。
イメージをつかむための判りやすさを重視して焚付から燃え尽きるまでの平均の熱量で表した四角形で表してみよう。
赤の点線の正方形の燃え方がCB機
黒の実線の長方形の燃え方が触媒機
薪の持つエネルギーは同じなので、CBや触媒の燃焼方式の違いによって、取り出せるエネルギーの総量は同じになる。つまり、このグラフのCB機と触媒機の四角形の面積は同じということだ。CB機は触媒機に比べて排気抵抗が少ないので、早く、勢い良く燃える傾向がある。煙突ダンパーで制御したところで、その傾向は必ず残る。そのため単位時間あたりの熱量が高く、その分燃え尽きるのも早いということになる。逆に触媒機の場合は触媒が排気抵抗になることで、単位時間あたりの熱量が低く、長持ちする傾向がある。これまでの私の経験から、だいたい時間にして2割程度だろう。
このように薪から取り出すエネルギー長時間持たせようと思ったらピークパワーを抑えれば良いし、ガツンとパワフルに燃やしたければ、その分燃えるのは早くなるということだ。どのように燃やしたところで同じ物量の薪から取り出せるエネルギーの総和は変わりない。2割だけ時間を長持ちせるか、2割だけ熱を多く取り出すかの違いだ。触媒機だから「熱量がCB機と同じで、なおかつ燃焼時間も長い」という魔法のようなことは絶対に起きない。この単純な原理原則が忘れられて「触媒機は燃費が良い」という言葉だけが独り歩きしているのが実情だと思う。
なお、厳密に言えば上の黄色で描いたような四角形にはならず、下のオレンジの測定値の実測グラフのようにピークが中央の左部分にある、このような複雑なカーブを描くことになる。
AGNIの場合の触媒、グリドルの温度変化(赤/青が触媒、紫/緑がグリドル)
CB機は短時間でガツンと熱を出すのが得意
CB機の炎は明るく華やかだ
触媒機はゆっくりジワジワと薪を燃やすのが得意
触媒機のゆったりとした炎
昨シーズンはCB機のハンター、今シーズンは触媒式のAGNIを使い倒して、両者の違いを実感したことだけど、燃焼機構の違いで、どちらかが圧倒的に優れているということはない。どちらも一長一短で、それぞれの特徴や個性があるだけだ。ハンターはガツンと早く暖かくなるけど、その分だけ薪の消費も早い、AGNIは逆に暖かくなるまで時間がかかるけど薪の消費がゆっくりというように、正反対の性質を持つ。
薪ストーブの燃焼は「魔法」や「哲学」ではなく「物理」の原則に従っている。「触媒機は燃費が良い」という言葉の定義を燃焼時間の長さと言うならば、逆にピークパワーで瞬間的にガツンと取り出せる熱量はCB機の方が多いということになるだけだ。着眼点をどこに置いて話をしているのかというだけだ。どちらかが一方的に優れているというものではないということを理解すると良いと思う。
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CB機と触媒機の比較、これは私の頭の中でモヤモヤしていた疑問に答えていただいた記事でした。長年の疑問がスッキリとしました。どちらも総熱量は同じというコメントがとても理解し易いですね。薪ストーブを購入した後は長年使い続けることとなるわけですから、メンテナンスコストの比較をした場合は、CB機の方が良いことになるのですかね。
クボタさま:
実は、このようにシンプルで単純なことなのですが、意外とこういうふうに考えにくいですよね。
おっしゃる通りでメンテナンスのコストは定期的な触媒の交換、ダンパーユニット破損時のアッセンブリー交換と、触媒機には必要になってきます。それがないCBの方が有利ということになりますね。
費用的に燃費がいいストーブとは同じ材料で同じ燃焼効率なら外気に煙突から放出される損失熱量の大小で決まりませんか?
ペレットストーブなど燃焼効率は高めの数値ですが強制排気をしています。
逆に薪ストーブの触媒機では煙(木質ガス)を触媒で燃やす分、AGNIのような複合機では触媒と二次燃焼で二重に木質ガスを燃やす分、煙のまま損失する熱が少ないのではないでしょうか?
蓄熱型のストーブは本当の意味で高燃費では?
真木よう子さま:
素晴らしい視点だと思います。
おっしゃる通り、300kg-500gkg程度の重量のホンモノの蓄熱型の薪ストーブは薪が燃えた後も、しばらくの間、熱を放出し続けるので、高燃費ですね。
感覚的なことしか書いていない自分の説明と違って分かりやすくて良いと思います。
※薪の状態が良くない場合は論外ですね(笑)
どうもユーザーはストーブ本体に目がいってしまいますが、薪が最大のファクターですよね。先日も国産鋼板のストーブ設置のお宅での話。思ったより暖かくないって、500度くらいになるはずだ、と。立ち枯れの割ってない薪なんですね。これではカロリーは得られませんね。
当方のヘリテイジのように、直接熱はそれほどでなくとも、蓄熱性が高いので当家の暖房として非常に重宝しておりますし、即暖性がある鋼板製も、直接熱が欲しい方には、意義があると思います。著名輸入メーカー品ならそんなに熱損失の差はないと思いますよ。ただ使い勝手や、熱の出し方の時間(高く早く、低いけど長く)の相違はありますね。
ペレットは、定量の燃料を送風して完全燃焼させること、そして排気工程で、熱交換機で暖房に使っていることで、間違いなく燃焼効率は薪ストーブより上です。
同じ1mの煙突の先端に手を当てても、薪ストーブは触れませんが、ペレットストーブは温い位です。両方使ってますから間違いないです。
薪焚亭さま:
コメントありがとうございます。理論的なこと、感覚的なこと、両方とも大事ですよね。補完しあえて良かったと思います。
その「論外」の状態で使っている人もけっこう多いのですよねぇ・・・。
koudaさま:
おっしゃる通りで「薪」「煙突」で9割以上決まってしまいますよね。全体の中で「本体」が燃焼に与える効果の比率は1割程度だと思います。
乾燥不足の薪は、その薪の中に含まれる水分を蒸発させることで熱が炉内で使われてしまうので、本体まで伝わりにくいですよね。ガンガン焚いている割りに暖かくない場合は、そのケースがほとんどです。
本体の蓄熱性能で快適さがずいぶん違うのもヘリテイジを体感すると理解できますよね。
それからペレットストーブの高効率もおっしゃる通りだと思います。薪集めできない人、煙突工事が困難な家には有効な選択肢ですよね。
面白いお話ですね。
(^_^)
このお話、あくまでもきちんと完全燃焼できている前提のお話ですよね。
そう考えるとストーブの差は1割程度と言うのもうなづけます。
ただ、そうするとメーカーや価格の差はどこへ?と思ってしまいます。
そこは、車で例えるとパワーバンドや乗り心地とかになるんですかね?
良いストーブは、どんな焚き方でもきちんと燃焼してくれたり、熱効率が高かったり。その反対は煙が出やすかったり。
かなパパさま:
車のエンジンにたとえると、パワーバンドの幅、トルクとパワーの出方みたいな感じですね。
それだけでなく扉やボディの剛性、シートの質などで乗り心地が違ってくるなど、高級機ならではの、動力性能とは違う領域もあります。