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高気密高断熱住宅への薪ストーブ導入の課題

住宅の断熱、気密性能は、どのような建材を使うのかと、施工技術のレベルの掛け合わせで決まってくる。どんなに性能の良い材料を使ったとしても、稚拙な施工技術では、その性能は生かされない。いくら技術が高くても、使う材料がショボい場合には、限界がある。個別の案件ごとに違ってきて、なおかつ完成まで、性能は確定はしないけど、ある程度の目安は推測できる。

最近の高性能な高気密高断熱住宅においては、第三種換気での24時間換気で、室内が負圧になっていることが多い。どの程度の負圧になっているのかで、薪ストーブとの相性が決まってくる。

24時間換気の風量が同じでも、C値の差で負圧の数字が全然違ってくる。具体的な数字で説明すると、同じ150m^3/hの風量でも、C値が0.5cm^2/m^2の場合に負圧が8Paになる設計の外気取り入れ口の有効開口面積だとしたら、C値が1.0cm^2/m^2の場合は負圧は4Paになる。

高気密高断熱住宅に薪ストーブを導入する場合、快適に使えるかための大きなポイントは、24時間換気による室内の負圧の値を可能な限り小さくすることだ。

「外気導入をアルミフレキで薪ストーブに直接接続すれば問題が起きない」というのは、よくある誤解
6年前に一度書いた内容で、個人的には「今さら」の内容なのだけど、いまだに誤解されている人が多いので、その時に書いた内容を、補足&アップデート...

薪ストーブの定格出力、安定燃焼時の煙突のドラフト(上昇気流)による負圧は以下のサイトの計算式、ツールによって概算値が出てくるが、煙突内平均温度150℃、煙突長さ4m, 外気温10℃において、約16Paだ。

上の計算値は、あくまで、薪ストーブが安定燃焼した時であって、焚き付け時は、この1/10程度のドラフト、上昇気流、負圧しか出てないことは容易に推測できる。つまり、焚き付け時には、薪ストーブの煙突は1-2Pa程度の負圧で排煙しているわけだ。

薪ストーブの焚き付け時に、24時間換気扇が、室内で4-8Paの負圧になる排気をしていたら、薪ストーブの炉内の煙は煙突に向かわずに、換気扇に向かっていくのは理解できると思う。また、台所の換気扇を回せば、24時間換気どころの話ではなく、一桁大きくて、室内の負圧が30-40Paになることもある。

焚き付けから安定燃焼時までは、台所の換気扇を回さないことはもちろんのこと、窓を開けたり、24時間換気扇を切ったりして、煙突へ煙が抜けていくようにして、室内の負圧を極力下げた状態を維持して、薪ストーブの安定燃焼まで待つということが必要になってくる。

24時間換気による負圧が小さければ小さいほど、薪ストーブが快適に使えるわけだ。換気扇の風量は決まっているので(住宅内の空気を1時間で0.5回入れ替えるだけの能力)、負圧のコントロールは外気取り入れの有効開口面積(つまりダクトの量)の設定で決まってくる

ちなみに、家が完成した後は計算上の理論値ではなく、微差圧計によって、室内の負圧、煙突の負圧も計測(実測)できる。もし、既に建てた家で、薪ストーブの煙の室内への逆流に悩んでいる人がいたら、このような測定器で、現状室内がどれだけ負圧になっているか計測してみると、色々な対策方法が見えてくると思う。

高気密高断熱住宅を建てて、そこで快適に薪ストーブを使いたいと考えている場合には、設計士や工務店に、最も最初の段階で「薪ストーブを導入したいけど、室内の負圧による煙の逆流や、屋根に煙突の穴を開けることについてどう思うか?」と見解を確認しておく方が良いと思う。

「計画換気で設計した以外の煙突や外気導入の穴を開けるなんて、ありえない」と考えている場合もある。この場合は、薪ストーブの導入を強行すると、後々色々なトラブルが考えられる。

高気密高断熱住宅の場合は、フラッシングで煙突を出すよりも、チムニーを屋根上に造作した方が、気密性、断熱性もコントロールしやすい。

設計上の換気量、空気取り入れダクトの数、有効開口面積、負圧の数値を具体的に開示してくれて、場合によっては有効開口面積を増やして、負圧が高くなりすぎないように調整してくれる柔軟性があるかどうかを契約前の段階で、しっかりと確認しておいた方が良い。

玄関の扉を開くのに負圧の圧力で老人、子供だと大変というレベルの負圧のままだと、かなり頻繁に薪ストーブの煙が室内に逆流して閉口することになると思う。

ドア解放力の計算

この記事では住宅の気密性と負圧の観点から、薪ストーブへ与える影響と、工務店の選定方法を書いたが、明日は断熱性能の観点から書いてみようと思う。

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