6年前に一度書いた内容で、個人的には「今さら」の内容なのだけど、いまだに誤解されている人が多いので、その時に書いた内容を、補足&アップデートして、さらに詳しく解説していこう。
第三種換気によって24時間換気が行われている高気密高断熱住宅において、薪ストーブを導入する場合には「外気導入」が必須ということは、最近では常識に近い内容で、これに対して異論を述べる人はまずいないだろう。
しかし「外気導入」について、さらに、もう一歩踏み込んで追求していくと、意外と大きな誤解が、いまだにまかり通っている。
そして、この方法であれば、室内がどんなに負圧になっていても全く問題ない。ノープロブレムという考え方だ。
しかし、この考え方には、2つの大きな誤りがある。
直接接続による薪ストーブへの外気導入の一例
一つ目の誤解は、薪ストーブへの外気導入の仕方は上記の「直接接続」だけではない。「外気導入」には二種類あって、シャッター式のガラリ(レジスター)を薪ストーブ近くの炉台、炉壁に設定して、そこから薪ストーブの空気取り入れ口に空気の流路を設ける「間接接続」という方式がある。
二つ目の誤解は、直接接続したとしても、室内が負圧になっていれば、室内側への煙の逆流が発生する。これについては、この後詳しく解説する。
1.アルミフレキの蛇腹の表面の凸凹に埃が詰まって非常に見苦しくなる。そして、掃除が困難。
2.アルミフレキ周辺の炉台、炉壁に埃がたまりやすく、掃除が困難
3.薪ストーブの背面から水平方向に蛇腹を出す場合、床下からの吸気の場合折り曲げスペースを確保するために薪ストーブが手前に来てしまい室内側が狭くなる
4.薪ストーブの底面から垂直方向に蛇腹を出す場合、煙突芯との位置関係がシビアで垂木、構造物が干渉して、フレキが曲がったり、上手く接続できないケースもある
5.通年を通して屋外の空気が、薪ストーブへ流れるので、オフシーズンに炉内結露で錆の原因となる(冷たい鉄に、湿った生暖かい外気が触れ続ける)
6.そもそもフレキダクトそのものが見苦しい
7.煙突が煤で閉塞した場合、外気導入ダクトが排気ルートになってしまって、床下の加熱による出火で火災になった事例もある
(もし直接接続していなければ、火災になる前に室内が煙モクモクになって気づいたかもしれない)
同業他社の長野県東御市の薪ストーブ屋「Prezeal(プレジール)」でも、私と同じような「直接接続」と「間接接続」の比較の視点からブログの記事にされている。
一方、以下の写真の薪ストーブの外気導入の「間接接続」の場合は、上記の欠点が全て解消される。
また「間接接続」についての大きな誤解で「穴を開けたら室内が寒くなるのでは?」というものがある。しかし、現実はガラリから薪ストーブの空気取り入れ口に向かって、最短経路で外気が流れるだけで、室内の居室、リビングにおいて隙間風を感じで寒くなることはない。薪ストーブを使わない時には、ガラリのシャッターを閉めてしまえば良い。
適切に設計された計画換気の流路であれば、そのようなことなく、屋外からの新鮮な空気を取り込んで、室内の汚れた空気(呼吸による二酸化炭素、建材からの揮発性物質などを含んだもの)を、24時間換気の換気扇から排出できるはずだ。
以上のことから、高気密高断熱住宅において、薪ストーブの近くに「間接接続」でシャッター式のガラリ(レジスター)で外気導入を設定するのが最も合理的だと私は考えている。そのため、特に施主さんから「直接接続」の指定のない限りは、この方法で外気導入を行っている。当店の場合には、過去の施工の95パーセント以上は「間接接続」で行っている。ちなみに寒冷地の軽井沢の高気密高断熱住宅でも、この方式で全く問題ない。上記の「直接接続」のデメリットを認識した上で、それでも「直接接続」で、というこだわりのある人に対しては、もちろん、ゴリ押ししないで柔軟に対応している。
寒冷地の軽井沢の高気密高断熱住宅での床下からの「間接接続」での外気導入の事例(薪ストーブの真下にガラリ)
ここで、本題の「外気導入を薪ストーブにダクトで直接接続すれば、室内が負圧になってもOKなのか?」というところに言及しよう。このように考えている人は以下の図のように薪ストーブの燃焼システムが構築されていると考えているのだと思う。
もし、仮にこの図のように外気導入の取り入れ口から、薪ストーブ本体、煙突に至るまで完璧な気密性、密閉性があればその通りで、室内がどんなに負圧になっていても理論通り、屋外の空気だけ使って何ら問題なく燃焼するだろう。室内側に煙が漏れてこない状態で、普通に薪ストーブを焚いていると、そのように考えてしまうのも無理はないけど、現実は全く違って、外気導入から薪ストーブ本体、そして煙突に至るまで気密性も密閉性も、全然取れてない。煙突のドラフト(上昇気流)で排気ガスを引っ張ってくれているから、室内側に煙が漏れてこないだけで、実際には隙間だらけなのだ。吸気系、薪ストーブ本体、煙突の排気系の各部の隙間から室内の空気を引っ張りながら(吸い込みながら)燃焼しているので、見かけ上は気密、密閉が取れているように思えてしまうのだろう。
まず外気導入のアルミフレキは薪ストーブの空気取り入れ口に差し込んであるだけだ。ホースバンドを取り付けられる機種もあるが少ない。仮にホースバンドで締め付けたところで、手で引っ張って抜けない程度の補強にはなるけど、ガスケットやパッキンで気密を取っているわけではないので、接合部分から空気は漏れ放題だ。
次に薪ストーブ本体。これはもう隙間だらけと言っても過言ではない。もし、疑うならば、煙突の穴から水を注いでみれば良い。気密性、密閉性が取れているのであれば、扉を閉めた炉内に水が溜まり、水槽になって金魚も飼えるはずだ。現実にはそんなことはなく、水はジャブジャブ床下にあちこちの隙間から流れていく。「鋳物のストーブはセメントで各パーツが密着して気密が取れている」「溶接の鋼板製であれば隙間は全くない」というのも全くの誤認だ。意外と、どんな構造の薪ストーブでも、各接合部のどこかには隙間があるのが現実だ。分解して細かいとこを見てみれば誰でも目視確認できる。また、補器部分に関しては、もし、完璧な気密性、密閉性が取れるのであれば、空気調整の弁も固着して動かないということになる。
わざわざ炉内に水を注ぐ実験をしなくても、以下の写真のように、炉内に溜まった結露水が炉台に垂れてきたという実例もある。このくらい薪ストーブというのは気密が取れていない物なのだ。
さらに、薪ストーブと煙突の接合部、そして煙突同士の接合部、これらも隙間だらけで、気密性、密閉性のかけらもない。もしパッキンやコーキング、ガスケット、セメントなどで、気密、密閉対策してふさいだとしても、熱で伸び縮みしてすぐに劣化して維持できない。
つまり、薪ストーブの燃焼システムは上の図とは、程遠いもので、入り口から出口に至るまでの、どこからどこまでも、全て隙間だらけだと認識しておいた良い。
私の書いたこと、言うことに納得がいかない、信じられないという人がいたら、煙突メーカーや、薪ストーブメーカーに、確認して裏取りをしてみることをお勧めする。
いくら薪ストーブの外気導入をアルミフレキで直接接続で行ったとしても、24時間換気の影響で、室内が強い負圧になれば、隙間から煙や一酸化炭素が漏れだしてきて、換気扇に向かって流れていくのが現実だ。つまり、「アルミフレキで直接接続で外気導入すれば、高気密高断熱住宅で、いくら室内が負圧になっても心配ない」というのは大きな誤りだ。
通常の気候での薪ストーブからの煙や一酸化炭素の流出、逆流というのは、「直接接続」か「間接接続」かという外気導入の方式とは一切関係なく、24時間換気の換気扇によって引き起こされる、室内の負圧量のコントロールでのみ決まってくる。高気密高断熱住宅の気密性が高ければ高いほど、24時間換気の換気扇で屋外に室内の空気を引っ張る際に室内が負圧になりやすい。そのため、高性能な家ほど24時間換気の、換気扇の排気量に応じた適切な空気取り入れ口の開口面積、個数を確保して、負圧になり過ぎないように設計段階で配慮してやることが重要だ。
「高気密高断熱の家を建てたい、そこで快適な薪ストーブのある暮らしを送りたい」場合に、住宅性能にこだわりすぎて、負圧になりすぎないような配慮、設計をしてくれないような設計士や工務店だったら、別の業者に変えるか、薪ストーブの導入はしない方が良いと思う。
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コメント
これから薪ストーブのある家を高性能住宅で建てる予定の皆さんは大変気になる大事な点。
同感しました。
さてアドバイス頂きたい事は『高気密高断熱の住宅を建てそこで快適な薪ストーブのある暮らしを送り』たいと言う理想の両立を計るためには川原さんはこのブログで『住宅性能に拘り過ぎて、負圧になり過ぎないような配慮、設計をしてくれないような設計士や工務店であれば 別の業者に変えるか、、、』
と言及をされておりますが、高額で大切な住宅を任せる設計士または工務店選びで住宅性能に拘り過ぎているか否かを実際問題として見分けるか(見極めかた)について具体例に示して是非教えて下さい。
家を任せる予定の工務店さんや設計士さんと薪ストーブやわ両立させる議論する際に何をどう具体的な住宅性能【拘り過ぎないか】で打合せるかのポイントはどうしたら良いんでしょうか?
薪よう子さま;
まずはストレートに「薪ストーブを導入したい」という希望を伝えて、高気密高断熱の住宅の負圧での煙の逆流問題、煙突プランについて設計士、ハウスメーカーの見解を尋ねたら良いと思います。
そもそも「煙突の穴(や外気導入の穴)」を、自社で設計した計画換気の穴以外で開けるなんて、とんでもない!ありえない!」と考えているところであれば、薪ストーブ設置を強行すると、様々なトラブルが容易に想像できます。
その上で、設計段階における室内の負圧の計算値が何Paになるか、計画換気の開口面積が何cm^2になるのかと、具体的に数値で開示してくれることが必須と考えます。さらに、その数値の値によっては、規定の負圧の設定値、開口面積の設定値を、薪ストーブの煙突ドラフト力に寄せて、柔軟に変更してくれるのかという確認が必要になってくると思います。
もし、子供や、かよわい女性の引く力で玄関の扉を開くのが困難な程度の負圧になるほどの気密性、密閉性のままで、変更、融通が利かないような建築業者であれば、薪ストーブは導入しないか、あるいは別の業者を探すのが良いかと思います。
[…] 直接外気導入のデメリットとして「煙突が煤で閉塞した場合、外気導入ダクトが排気ルートになってしまって、床下の加熱による出火で火災になった事例もある」とかわはら薪ストーブ本舗さんはブログで書いていました。なるほど、そんなこともあるんだ。 […]