もちろん一度叩きつけるだけで原木が割れることはなく、数回繰り返す必要はあるのだが、回数を重ねてもそれほど「疲れる」という印象はない。以下の写真のように一回叩きつけるごとにちょっとずつ刃先が原木に食い込んでいくという感じだ。クサビとハンマーで薪割りしたことのある人はイメージがつかみやすいと思う。
また錘を落とした際の音だが、以前紹介した「手動薪割り機」と比べて衝撃吸収の素材が錘と刃の上部の間にあるために、大きな強い金属音が耳につかず快適に作業できる。
熟練を要さずに誰でも薪割りできる
身体への負担が少ないことは、大人だけでなく、力の小さい女性や小学生程度の子供でも作業できるということでもある。力が小さい場合には打ち付ける回数が増えることになるが、特定の一点に刃先が集中して当たるので、それなりの時間はかかるが、確実に割ることができる。斧の場合には、狙った場所に刃先を振り下ろすのに、ある程度の慣れが必要だ。腕くらいの直径の原木だと斧で中央部をヒットするのはけっこう難しい。ヘタをすると空振りして刃が思わぬところへ落ちたり、原木を倒してセットしなおすことになりがちだ。スマートスプリッターの場合には、練習不要で本当に誰でも簡単に薪割りできるのだ。
多少原木が曲がっていたり、自立しにくいやつでも刃先で押さえつけてやるので、強制的に薪割り台の上に立たせて割ることができるのも特筆すべきポイントだ。
安全性も高い
周辺に誰もいなくて一人で薪割りをする場合には斧でもそれほど問題にはならないが、周辺に誰かいる場合には斧での作業はけっこう危ない。ゴムバンドや古タイヤで薪が飛ぶのを抑えたりすれば大丈夫だが、割った薪が左右に豪快に吹っ飛ぶことがある。その吹っ飛び具合や音が快感でもあり、ストレス解消にもなるのだが、安全性という意味では気をつける必要がある。スマートスプリッターの場合は、割れた原木が吹っ飛ぶことはなくポロっと薪割り台の左右に転がるだけだ。このため周囲に気遣う必要もない。
また、振り下ろした斧が原木に当たらずに空振りして自分の足に刃先がきて怖い思いをしたことのある人もいるかもしれないが、スマートスプリッターの場合はそういうことも皆無だ。
斧で毎年6トンの原木を処理している私の観点からの印象は「ラクだけど処理するのに時間がかかる」ということだ。斧であれば一回振り下ろせば割れるところを、スマートスプリッターの場合には数回は錘を叩きつける必要があるからだ。これは作業がラクなのと相反する要素であるので仕方ないことだ。
それから使う時に支柱を薪割り台にセットする手間と時間がかかる。自宅などの決められた場所で作業する場合には問題にならないが、出先ですぐに作業できない点も要注意だ。
スピーディーにサクサクという感じではないけど、斧と比べて疲れないので、その分休憩の必要性がなく継続的に行えば、ある程度の時間あたりでの作業量は、どちらでも同じになるかもしれない。
まあ本気で競争したり、手ごわい原木の場合には斧の方が絶対に早いだろうけど、とにかくスマートスプリッターでの薪割りはラクだ。気合を入れなくても、薪割りできるというのが良い。
一番のお勧めは「斧で割って、疲れたらスマートスプリッターに切り替えて」原木をやっつけるという作業方法だ。
どちらが良いということではなく、両方あるのがベストだろう。