薪ストーブ設置コンサルの依頼があった、今回の富山のケースでは、普通に薪ストーブ店で施工すると完全に予算オーバーになってしまうという状況だった。
予算的に厳しい場合には「薪ストーブの本体や煙突をローコストなもので妥協する」というやり方が多いだろうけど、今回は薪ストーブも高級機種と呼ぶにふさわしい蓄熱性能、ヒートライフを誇るソープストーンが絶対条件。煙突に関しても、建物が吹き抜けではなく、普通の二階建ての木造建築なので、安易にシングル煙突を多用できないという難しい条件だった。
そういう諸条件でスタートしたコンサル案件だ。
費用を抑えるために、私に「施工指導のみ」での5万円のコンサル代をいただき、施主さん自らDIYで工事を行って工事代を浮かせる作戦だ。いくらネットで知識を仕入れて勉強しても、実際の現場では教科書通りにいかないケースの方が多いので、アドバイザーがいた方が良いという判断だろう。
もちろん部材だけ欲しくてコンサルが要らないという人もいるだろう。そういう場合は私のところへ、依頼の話しが来ないので実態は判らない。しかし、コンサル代を払ったことで、ノウハウをその現場で得られること、無駄な時間や手間の回避などを考えると、結果的には安くつくと思う。(未経験で試行錯誤すると工事が1-2日で済まなくて完了までにやり直しなどで1ヶ月くらいかかってしまうこともあるだろう)
そして薪ストーブ本体や煙突も国内に流通しているものを利用すると割高になるので、Hearth and Homeの薪ストーブ輸入代行サービスを利用して施主さんに個人輸入してもらう形を取っている。けっこう誤解されがちだけど、私は国内の正規品、純正品を仕入れて施工販売している薪ストーブ施工店の立場なので、個人輸入も個人輸入代行も一切していない。
また輸入品の煙突部材は、国産と比較したら、精度や質が落ちるのは仕方ない。機能優先で、落とすところは落とした、良い意味では「合理的」「コストパフォーマンスが高い」という割り切った製品であることも認識しよう。
二重煙突はビス止めで固定なので、施工性が悪い
フラッシング表面のコーキング
フラッシング裏面のガルバスポット溶接
国産の雨仕舞い部材がステンレス製のシームレス溶接で作られているわけで、値段も高いけど、高いなりの違いがあるということは認識しておこう。もちろん、こういう部材は自分で鉄工所に依頼して製作するなどの方法もあり、DIY精神を発揮して色々、加工したり失敗も含めて、試行錯誤しながらやるのも楽しいと思える人でないと海外製品はお勧めできない。(そういうのが嫌な人は最初から国産部材を使った方が良いと思う)
また普段使っている国産部材であれば、私も既にそれなりにノウハウを持っているけど、今回のカナダ製の煙突部材に関して基本は同じだけど、細かいところはずいぶん違うので、今回の案件では色々と勉強になった。
コンサル案件に関しては、私が工事するわけではないので施工の結果の責任まで持てない。施主さんにもそれなりに勉強してもらって、準備してもらうし、甘やかさない。丸投げに近い形で「どさくさに紛れて、私に工事させちゃえ」みたいな雰囲気を感じたらコンサルは断る。DIYでの施工なのだから、一通り自力でも何とかできる状態でないと、後々のメンテナンスやトラブルの際にも対応できないからだ。私は指導はするけど、作業はしないということを前提にしている。(施主さんがビスを打つ間に煙突を支えて持っているくらい状況によってはするけど)
実寸でチムニー断面の図面を書いて、施主さんが雇った大工さんや板金屋さんを施主さん自ら動かす
施主さん自身が詳細な図面を書いて、自分で職人に具体的に一つ一つ指示しないとチムニー作成も進まない
煙突工事や薪ストーブ設置の当日の作業はもちろんだけど、その前段階の準備や段取りも含めて、人任せにしてしまうような人はコンサル案件ではダメだ。先日の工事の写真からも推測できると思うが、施主さん自ら作業して、こういうふうに図面も自分で作れるくらいでないとコンサル案件での薪ストーブ設置は厳しいと思う。それが、無理な人は、素直に「薪ストーブ設置工事」として丸投げで依頼した方が良いとおもう。
今回は無事に完了できて、良かった。
コメント
5万円とのことですが出張費などを含んでいるとどこかで書かれていた気がします。(違ってたらごめんなさい)
遠方だったり回数が多いと赤字になっちゃったりするんでしょうか?
(回数が多い例はあまりないかもですが)
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我が家にはもう薪ストーブがあるので、コンサルをお願いすることはないと思うんですが興味ありまして(´▽`)ヾ
おぼうさま:
コンサル案件は赤字ですね。DIYで施工したいユーザーのためのボランティアです。
だから逆にアドバイス以上のことを求められたり、責任を押し付けられたりするのも筋違いです。
「工事請負」との違いを明確にするために、作業前に契約書を取り交わしています。
室内の空気断熱二重煙突ですが、これ、施工性はほんとうに悪いです。
一人で施工するのは、相当難しいので、工夫が必要ですが、自分の場合、吹き抜けに一人で設置したので、大変なんてものではありませんでした。
コツとしては、事前に下穴を開けておくこと、そして、予め水平(完全に水平な状態)でまっすぐに煙突を2本づつつないで、高所などでのビス止め作業自体を減らす、横着をせずに、足場を組む、ということで何とか一人で組み立てました。
今回の案件向けに、国産品が非常に高額であったため、煙突固定金具や化粧板を設計して、ステンレスで作成しましました。
写真にあるチムニー用フラッシングは、出来が悪いですね。
うちで使っているものは瓦用の傾斜屋根フラッシングですが、ステンレス製で、随分と品質に差があります。(同じ、ICC煙突です)
今回の案件では、チムニーのサイズとフラッシングのベースが合わず、打ち合わせ不足は否めませんが、こちらも国内生産します。
輸入代行は初めてのケースで、金物類はすべて試作なので、無料サービスにしたので、利益はゼロ化、赤字だったように思いますが、次につなげていきたいと思います。
金物の件なんかは、拙ブログの方に、詳細をアップしたいと思います。
「がんばって自分で薪ストーブを付けたい人に協力したい」
「失敗して大変なことになるのが気の毒だ」
などの思いではとお見受けします。
それほどに薪ストーブのこと
薪ストーブを使う人のことを愛せないとできないことですね。
脱帽ものです(´▽`)ヾ
single02さま:
取り付け金具や、雨仕舞いのパーツなどは、国内製作したものが標準であると良いですね。それがあればあらかじめ、そのパーツに合わせてチムニー、下地などの作成が可能で合理的だと思います。
おぼうさま:
ご理解いただきまして、ありがとうございます。