ログハウスの屋根は勾配がきついケースが大半だ。ログハウスで緩い傾斜の屋根は見たことがないが何故だろう?
このような屋根に煙突を立ち上げる場合、煙突トップにどうアクセスするのかを考えるのが一番重要だ。メンテナンスができない煙突設計は致命的だ。この現場は、設計段階から相談を受けたのでチムニーに直接二連梯子をかけることができるように提案した。
地上からチムニーに直接梯子をかけられるようにした
通常より50ミリ大きい一辺780ミリのチムニーで、800ミリ角の角トップを採用した。幅広のチムニーのため、直接地上から二連梯子をかける時にも安定して支えることができる。勾配のきついログハウスの煙突トップに、安全かつ簡単にアクセスできるように考えた。
最近、相談を受けている話でこういうことがあった。
この写真で紹介した現場とは別のログハウスの実例で「室内側から下から上にブラシを突き上げれば煙突掃除OK!」「煙突トップへのアクセス経路は考えなくてOK!」みたいなことを言う工務店や、薪ストーブ店があったそうだ。それに対するセカンドオピニオンを求められたのだが・・・そういう発言はユーザーのことを全く考えてないから出てくるものだと思う。
実際には煤が一番溜まるトップ部分は、下からブラシを通しても掃除することは「不可能」だし、トップにが煤で詰まったら全く燃えなくなる。その前の段階では付着した煤が近所に飛散して、近所迷惑やクレームの元になる。焚き方次第で数年後にはそうなるが、その時になっても施工店、販売店は何も責任は取ってくれないだろう。
そういうことを平気で言って、煙突トップにアクセスする手段を全く考えていないところが多いのが、世間での実情のようだ。そういう工務店や施工店は、家を建てて、薪ストーブを設置して「その売上金が回収できれば、後のことはどうなってもいい」というのが本音だと思う。長くそのユーザーと本気でつきあっていこうと考えていたら絶対に出てこない言葉だと思う。難しいことをやらないで、手っ取り早く受注して、チャチャっと工事を終わらせてしまおうという本音を私は感じてしまう。工務店の下請けの薪ストーブ店は、工務店の顔色を見ているわけで、ユーザーのことを考えているわけではない。
煙突掃除は基本的には1シーズン終わったら一度やる必要がある。その度に足場を組んだり、高所作業車を手配したりすることは現実的ではない。トップにアクセスしやすいメンテナンス性を考えたプランニングこそが、新築で薪ストーブを設置する場合に一番重要なことだ。薪ストーブの設置位置は、トップから煙突掃除ができるかどうかという視点でチェックしよう。これを甘く見たり、無視して設計すると、後悔することになるだろう。
薪ストーブを使って数年後の煙突トップからの煤の飛散による苦情で薪ストーブを使えなくなったら諦めがつく人とか、煙突掃除の度に足場を組んだり、高所作業車を手配できる財力のある人は煙突トップへのアクセスを無視した設計でもOKだが、そうでない人は工務店や薪ストーブ店から「下からブラシを通せばOK」という言葉は信じないようにしよう。そして施主なのだから主導権を持って、煙突トップに素人でもアクセスできる設計を考えてもらおう。出てきた提案を慎重に判断して、自分でも煙突トップにたどり着けるかどうかという視点で厳しくチェックすることが必要だ。
私は自分が関わった現場の場合には、煙突トップにユーザーでも容易にアクセスできるようにしている。相談を受けて、あまりにも無謀な(トップにアクセスできないような)煙突の配管経路を希望された時には「薪ストーブの導入は断念した方が良いのでは?」と答えたこともある。(最終的には私のプランが採用されて、薪ストーブの設置位置を大幅に変更することに決定)
話はこの現場に戻って・・・・。
現場で大工さん、設計さんとも待ち合わせて、煙突固定金具の下地の位置の打ち合わせをした。
また施主さんとは、シーリングファンの位置の打ち合わせをした。
こういうことは、図面や電話だけのやりとりだと、話が上手く伝わらなかったり、誤解が生じて問題となるケースもあるので、きちんと現場で顔を合わせて、実地確認するのが一番確実だ。
炉台周辺の様子
チムニー天端までの寸法
天井までの寸法
もう少しで、チムニーの外壁も完成するようなので、完成後にすぐに、煙突配管&角トップ設置の予定だ。
部材は既に入荷済み
関東では梅雨明けしたので、雨の影響は受けずに比較的工事のスケジュールを組むのは楽だろう♪
コメント
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ログハウスの屋根が急勾配の訳ですが、諸説はいろいろあると思いますが、元々ログハウスの起源はフィンランドとされています。
また、北欧・東欧・北米で広まり降雪地帯が主だった事から積雪に対する建物の負担減少に急勾配となったとされたようで、現在までそのデザインが急勾配の屋根に引き継がれたものと思われます。
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風さま:
ログハウスの屋根の勾配に関する考察をありがとうございます。
積雪のあまりない地方で急勾配の屋根はデザイン優先で合理的ではないとも言えるかもしれないですね。
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急勾配の理由ですが、日本の法規制の問題もあるかと思います。
ログハウスは、丸太組構法といって、建築基準法施行令で、いわゆる軸組(在来工法)などと同じように基準が定められていて、その枠内でやる場合、大臣認定や、構造計算といったお金のかかる設計を省略できます。
写真の案件は、いわゆるマシンカットですが、ハンドカット(生の丸太を加工して作る)の場合、基本的に平屋しか建てられません。
そこで、屋根裏部屋を作ることが大半なので、トンガリ屋根になるという寸法です。
最近、といっても、かれこれ10年くらい前ですが、規制緩和されて、フルログの2階建てや混構造(例えば、1FをRCで作って、2F以降が今までのログを載せる三階建て)のようなことがしやすくなった(マシンのみ)と記憶していますが、興味が無いので詳しくは追っていません。
それと、日本ならではの理由として、雨が多く、日差しも強い地区があるので、それらからログ壁を守りやすいので、屋根を大きくするのはよくあることです。
ただ、急勾配だと部屋が暗くなりがちなので、屋根を折ったり、天窓をつけたり、6寸くらいまでゆるくしたりといろいろな工夫があります。
でもやっぱり、矩勾配が多いですね。
うちも矩勾配です。
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single02さま:
法規制の問題があると画一的になってしまうのも無理はないですね。