薪ストーブのガラスが煤けるのは燃焼温度が低いからだと先日の記事でアップしたが「このことで薪ストーブを傷めるのか?」という質問を読書の方からいただいた。これに対する私の見解を述べておこう。
燃焼温度が低いために薪ストーブの鋳物を温度で傷めるということはないだろう。傷めるとしたら煤けたガラスを拭き取ることを繰り返すことで目に見えないような細かな傷がついて、長期間使っているうちに少しづつガラスの透明度が落ちてくるということくらいだろう。まあ、ガラスが煤けたり曇ったりしても気にしないで使っているようであれば、多少透明度が落ちても問題はないのだろう。
触媒機の場合には触媒が煤けてしまっては煙と触媒が直接触れることがなくなり、煤が焼けるまで本来の二次燃焼が得られにくくなり、効率が落ちるのかもしれない。この点については温度が高くなればいずれは煤は焼けてしまうので「傷む」ということはないだろう。ただし、いつまでも燻らせていると本来の触媒の働きをせずに効率悪いまま本当の薪ストーブの能力を知らずに焚いているということになるだろう。
だから「煤けても気にしない」ということで良いのだろうか?本体にダメージはなくても、以下の二つのダメージが考えられる。
一つは煙突に対するダメージだ。ガラスが煤けているということは不完全燃焼しているわけで、煙突に煤、タール、クレオソートなどの不純物が付着が激しくなることだ。煙突が詰まってしまうと事実上薪ストーブは使えなくなってしまうので煙突掃除の必要が出てくる。煙突詰まりは臨界点を超えると加速度的に急激に進行するので、体感的には「ある日突然」という感じになる。真冬の寒い雨や雪の時に煙突が詰まってしまうとすぐに煙突掃除もできないので悲惨だ。ガラスが煤けるような焚き方をしている場合には煙突掃除の頻度が上がることは間違えない。自分でできる人は直接の金銭的な負担はないが、それなりの手間とリスクの発生、そして時間が必要となってくる。外注する場合には直接の金銭負担が発生する。
薪ストーブの平均表面温度が250℃程度の理想的な状態で焚いている場合には、写真のように、薪ストーブのガラスも煤けずに、煙突からも全くと言っていいほど煙は目視できない。生で良く観察するとゆらゆらと陽炎のような揺らぎが見えるだけで、写真では全く判らないので、念のために補足しておくが、これは焚いてない時の写真ではなく焚いている時の写真だ。
二次燃焼機能もなく、クリーンバーンでもなく、触媒もついてない普通にホームセンターで売っている中国製の安い鋳物薪ストーブでさえ、このレベルの透明な排気が得られるのだ。
排気温度もクレオソートが液化する150℃以上となるために煙突内部に煤やタールが付着することもない。(外気に直接さらされて冷却されるシングルのトップ部分の温度が100℃以上なので二重煙突内部は150℃以上であろうという推測)
二つ目は環境的なダメージだ。薪の乾燥が不十分だったり、空気を絞りすぎたり、薪の量が少なかったりという原因で温度が低すぎてガラスが煤けるわけだ。このような焚き方の場合には煙突からの煙もかなり出ているはずだ。住宅地では目に見える煙や臭いが発生することで近所からの風当たりも強くなるかもしれない。煤や目に見える煙が出ているということは不完全燃焼をしているわけで、本来は炉内で正常に完全燃焼すれば熱エネルギーに代わるはずだった成分を大気中に逃がしたり、煤として煙突に付着せているということだ。つまり貴重な薪からの熱エネルギーを有効に取り出さずに無駄に捨てているということでもある。薪をケチって空気を絞って煙を出しているようでは本末転倒というか、同じ熱エネルギーを取り出すのにより多くの薪を使用しているというということでもある。
それから火が落ちた後の炉内の様子を観察することでも焚き方のチェックはできる。高温で完全燃焼した場合には炉内は真っ白な灰だけとなるはずだ。黒い炭みたいな燃え残りがある場合には、空気を絞り過ぎていて立ち消えしてしまっている証拠だ。
「ガラスの透明度」と「煙突からの煙の透明度」「焚いた後の炉内の白さ」の3つが薪ストーブを上手に使っているかどうかのバロメーターだ。これらは放射温度計などの測定器がなくても判る、誰にでも簡単にチェックできる目に見える指標でもある。

