ちなみにこの時の炉内の写真の赤い部分は「灰」ではなく「熾き火」である。灰が熾きよりたくさんある状態だと灰が舞い上がってしまって食材に付着するし、何よりも熱量も全然足りない。今回のピザ作成時には下の写真のように薪ストーブの表面温度は270℃程度になっている。
薪ストーブを5-6時間程度ガンガン焚いていると自然とこういう感じになる。焚き付けから3-4時間は遠慮せずに薪をどんどん追加投入していき、その後で熾き火の増加とともに薪の追加投入を減らしていき、ピザを作ろうと思う時間から逆算して調整していく。温度を下げすぎないように要注意だ。そして料理開始の数分前に細めの薪を入れて、しっかりと炎が立ち上がったら準備完了だ。それが香りの良い桜の薪だったら理想的だ。
最後の細い薪を入れる直前に五徳(スタンド)を炉内の適当な位置にセットしよう。これを省略して熾き火に上にスキレットをベタ置きするのは、あまりお勧めできない。炎が立ち上がらなくなってしまいがちなので、ピザの上側が上手く焼けなくなる。また熾き火に直接鋳鉄が触れることで伝導熱でスキレットが極端に温度が上がってしまい、ピザの下側が焦げてしまう。上手に美味しく焼くには五徳(スタンド)を使おう。高価なものを使わなくても問題ない。ホームセンターで数百円程度で売っているはずだ。
一枚だけ焼く時はあらかじめ天板の上でダッチオーブンの蓋(スキレット)を100-150℃程度まで熾き火の量に応じてプレヒートしておいた方が良い。熾き火が多い時は温度は低め、熾き火が少ない時は高めだ。何度か試行錯誤して経験で身につけるしかない。パーティなどで立て続けに何枚も焼く場合には逆に、焼き上がったピザを取り除いた後に、スキレットを浮かせて置いて極力放熱させてやるか、複数のスキレットを使いまわしてやる必要がある。一枚焼いた加熱直後だと今度は温度が高すぎて、次に焼くピザの底を焦がしてしまう。慣れれば手のひらをかざして判断できるが、たまにやる場合には判断ば難しいだろうから、こういう時にも放射温度計を使ってみよう。
準備ができたらダッチオーブンの蓋(スキレット)に乗せたピザを炉内に投入する。出し入れの時は扉の開閉時間を最低限にして極力炉内の温度を下げないようにしよう。また炉内にピザを入れたら絶対にその場を離れずに焼き加減をよく見続けることが重要だ。トースターなどで焼いている時とは桁違いに早くできる。電気ストーブと薪ストーブの威力の違いを想像してみれば判ると思うが、余裕をかまして後から皿やカメラを取りにいったりすると焦がしてしまうこと間違えなしだ。実際には2分程度で焼きあがる。体感的には1分くらいな感じだ。見る見るうちにチーズの表面がぐつぐつ泡だってくる。ピザの表面が美味しそうに焦げてきたら完成だ。
ピザの表面の焼け具合は最後に投入した薪からの炎の勢いで決まってくる。そして底の焼け具合は熾き火の量で決まってくる。熾き火と炎のバランスが重要だが、何度かやっているうちに最適な状態が判るようになってくると思う。
ガラス窓から確認して、できたと思ったら躊躇しないですぐに取り出そう。途中で扉を開くのは炉内の温度が下がるので厳禁だ。集中してチェックしよう。見にくい時は懐中電灯を用意しておくと判りやすいが、その場合は炎の上がり方が足りないと思った方が良い。適度な炎の状態では炎の明かりではっきりとピザの表面が照らされて、それによって表面がちょうど良い感じで焼けるのだ。
取り出す時の注意事項は皮手袋だけで直接取っ手を持ち取り出さないということだ。皮手袋をしたうえでなおかつ乾いた布を持って、それで包むように取っ手をつかむことだ。皮手袋だけで直接持つと熱がダイレクトに伝わってきて火傷をする。
取り出したら炉台の上に置いてすぐにフライ返しでピザを皿に移動する。いつまでもダッチオーブンの蓋(スキレット)に置いておくとピザの底が伝わり続ける熱で焦げてしまう。
調理を完全に終えたら五徳(スタンド)を取り出すのを忘れないようにしよう。これは火バサミでつかんで取り出そう。そして薪ストーブの奥などの危険の少ない場所で十分に冷ましておこう。足が熾き火で真っ赤になって溶けてしまうかと思うくらいになっているから触ったら大変だ。忘れて炉内に放置しておくと極端に寿命が短くなってしまう。
私はいつもベーネカッサの冷凍宅配ピザを利用している。冷凍ピザだからと言って、そこらへんのスーパーで売っているものや、出来合いの宅配ピザとは比較にならない異次元の美味しさだ。味は本格的なピザ屋さんのもの以上だと思う。厳選された国産野菜を素材にして作られている安心さもあるし、自信を持ってお勧めできる。
この店は機械で大量生産しているわけではなく、数人のスタッフで手作りしているというところも特筆できるところだ。特定食品にアレルギーがあるような場合にも相談に乗ってくれて、スペシャルメニューを作って発送してくれるというきめ細かな対応もしてくれたそうだ。下の写真のスイートコーン×2ピザで使われているマヨネーズ(卵)を抜いてくれるなどのきめ細かな対応をしていると聞いて感動した。
なお、この店の商品は佐川急便の冷凍車で送られてくる。すぐに食べない場合はそのまま自宅の冷蔵庫の冷凍庫に保管しておこう。数ヶ月は持つだろう。
食べる24時間前くらいに冷凍庫から冷蔵庫に移動して完全解凍しよう。そして焼く30分くらい前に冷蔵庫から出して室温に戻しておけば完璧だ。冷凍のまま焼いても表面だけ焼けて中は凍ったままなので要注意だ。
一度注文すればその味や質にリピーターになる人も多いだろうと想像しているが、実際に今年の夏の開店以降、注文が殺到してスタッフ総出で休日返上で頑張っているとのことだ。
薪ストーブユーザーが注文する場合には、上記リンクからデフォルト注文すると一般的な「トースター用の半分カット」となってしまうので、必ず「カットなし」にチェックを入れて注文しよう。また注文時に備考欄に「かわはらに紹介されて薪ストーブで焼いて食べる」と明記しておくと何かオマケしてもらえるなど、いいことがあるかもしれない。
調理には「コンボクッカー」と呼ばれるダッチオーブンの蓋をスキレット代わりにも使える物がコストパフォーマンスが良くてお勧めだ。下のリンクの「私のおすすめ」のキャプテンスタグの10インチ(25センチ)の直径のものを私は愛用している。
フライパンはお勧めできない。私もこれを入手する前にフライパンで挑戦してみたのだが、鉄板が薄すぎて熱が伝わり過ぎて、プレヒートなしでやってもピザの裏面が思いっきり焦げてしまった。
実用性にこわだわる私はブランドに拘らない。鋳物の重量の蓋でしっかり圧力をかけた蒸し焼きができれば効果は変わらないわけで、鋳物についているロゴや文字の違いで味が変わるわけはないのだ。蓋と鍋のかみ合わせの精度など気にする人もいるようだが、どれも必要十分で「蓋が閉まらない」とか「圧がかからない」ほど違いがあるわけもないので、値段の安いこの商品で十分だと思う。同じ値段で2セット買えてしまう。2セットあればピザを連続で焼く時に焦がさずに使い回せるし、蒸し焼きのメイン料理とデザートを立て続けに作るなどパーティなどの際にもさらに活用の幅が広がる。
購入後の実戦投入前に行うシーズニングは、取り扱い説明書の手順通りに手間をかけてやらなくても問題ない。薪ストーブを使っているならばギンギンの熾き火の中に放り込めば一発だ!