こうしてブログをやっていると新築と同時に薪ストーブを導入するケースを見聞きすることも多い。
薪ストーブ未経験のユーザー(施主)は夢やイメージを持っているだけで、実際に使っているわけではないので、住宅の設計担当が本当に薪ストーブユーザーで、その経験やノウハウを盛り込んでくれれば良いのだが、そうでない場合には意外と使い勝手が悪くて後から「こうすれば良かった」と思うことになるケースも多いと思う。
未経験だと、施主も販売店も工務店も「薪ストーブの機種」とかにこだわってしまいがちだ。はっきり言えば薪ストーブの機種やメーカーは二の次だ。
薪ストーブを快適に使うための一番のポイントは薪の乾燥だ。十分に乾燥させるためには日当たりと風通しが極めて重要となる。敷地と家屋のことだけでなく薪棚の位置、室内への搬入動線などを盛り込んだ設計になっているかをもう一度検討してみて欲しい。北側で日の当たらないところへ薪を積むと、なかなか乾燥しなくて大変なことになる。既に十分に乾燥した薪を購入する場合はそれでも良いかもしれないが、薪の保管場所を軽視すると使い始めてから困ることになる。場所や環境はもちろん、保管に必要な容積(普通自動車が納まるガレージくらい)も含めて考えるべきだ。これらは実際に使っているユーザー以外は意外と気づかないポイントでもある。
次に薪の保管場所と薪ストーブの設置位置の相互関係、そして住宅全体の中の薪ストーブの設置位置だ。炉台は極力広く取りたいし、できたら床とフラットでバリアフリーにしておいた方がつまづいたり、ぶつけたりして痛い思いをすることもなくなる。
そして煙突だ。ストレートの二重断熱煙突で屋根抜きで立ち上げるのが理想だが、それだけでなく煙突トップまで掃除しやすいように屋根に上れる動線、安全対策を盛り込んでおけば完璧だ。下から上へ向けての掃除ではトップの部分の詰まりを完全に取り除くのは難しいのでストレートの煙突でも屋根に上れる方が望ましい。壁抜きで曲がりが多いと掃除の頻度も上がるし、掃除も面倒になる。いずれにしても焚き付けから通常の使用時に素直に排煙してくれるストレートに勝るものはない。薪の乾燥に次いで大切なポイントだ。
薪ストーブを自分の自宅で本当に使っている設計士だったら自然と上のポイントも計算に入れて設計しているはずだ。そして当然、薪ストーブの熱で家全体を暖めたり、洗濯物を乾燥させたりするスペースも確保してくれていると思う。薪ストーブユーザーでもある設計士が手がけた家を実際に見せてもらったり、泊まらせてもらった経験があるが「完璧!」と唸らされるものがあった。
薪ストーブのメーカーや機種の選定はその後でも十分だ。メーカーや機種にこだわってしまって、それ以上にはるかに重要な点を見逃さないように十分に注意したいところだ。「木を見て森を見ず」ということにならないようにしたい。せっかく新築時に導入するのであれば、メーカーや機種などの、後からどうにでもなることよりも、設計段階のその時でなければできない使い勝手の良さを十分に考えて、実現して欲しい。