千葉市内の中心部に近くて、なおかつ住宅が密集していないという、便利で環境も良い場所に建つ、かわいい一戸建てだ。ハウスメーカーを決める前にまずは土地を購入して、家を建てる前から敷地に自分で薪棚を設置して、まずは薪集めをしていたという、新築の薪ストーブユーザーにとっては理想的な動きだ。
しかし、一点だけ「吹き抜け」問題を抱えてしまったそうだ。二階が30℃オーバーで暑くなりすぎて、薪ストーブの設置されている一階へ降りてくると少しひんやりと感じるという状況ということで、コンサルティングに出かけてきた。
薪ストーブの上にシーリングファンが設置されていたが、これがあまり効いていないので、薪ストーブが設置されているのと反対の階段側へ移動して、下向きに回してやることで建物全体の暖気を循環させてやることで、若干の改善になるだろうということを話してきた。そして強力なサーキュレーターも持っていって、下向き送風の実演してみた。サーキュレーターを使うと送風音がかなり耳につくということも体験してもらった。
しかしながらシーリングファンやサーキュレーターによっての暖気の循環には限界があり、二階が暑すぎる場合には窓を開けるのが手っ取り早く確実な解決方法だということも話してきた。冬場に窓を開けることに抵抗があるようだったが、薪ストーブの圧倒的な熱量から、多少窓を開けても建物全体が冷えることはないので問題ない。そして一階がひんやり感じたらガンガン焚けば良いのだ。
薪ストーブを新築で導入する場合に、イメージだけで吹き抜けを設定してしまいがちだが、意外と扱いが難しいのだ。安易には吹き抜けにしない方が無難だと私は思う。吹き抜けがなくても暖気は自然と上に上がるので、階段があれば、そこから一階を温めた後にじわじわと二階が温まり、最終的に建物全体が快適な温度となる。
どうしても薪ストーブの真上を吹き抜けにする場合には、壁を二重構造にして、内部に断熱ダクトを通して二階の天井から一階床下へファンで強制送風してやるなどのかなり本格的な暖気循環プランを設計時に盛り込んだエアサイクルにすることをお勧めする。これが薪ストーブ真上を吹き抜けにする場合に唯一の快適な環境構築の方法だ。
あるいは、建物内の薪ストーブの上の吹き抜けの反対側、対角線側などにもう一つ別の吹き抜け、あるいは階段を配置して、そこからシーリングファンで一階に向けて下方への気流を生じさせて家全体で対流が起きるようにしてやるのも二階を灼熱地獄で一階が寒いということにならないための方法だ。
しかし、後からでは、なかなかその実現が難しく、「二階が暑くて一階が寒い」という薪ストーブの真上の吹き抜け問題の現実に気づいてからシーリングファンでの小手先の回避策となってしまいがちだ。
いずれにしても設計時に慎重に検討することが大事だ。