9月に発売されたドブレの最新技術が結集されたVINTAGE、そして昔からの伝統的なクラシックスタイルの700SLの「どちらにしようかと悩んでしまった」というコメントが寄せられたので、選択のポイントを解説しよう。
天板の温度が高くなるのは700SL
まずは一番の悩みの種になるであろう、天板の温度と料理について。
私なら640CBとVINTAGE 50だったら迷わずVINTAGE 50を選択する。天板への熱の伝わり方が、熱交換の突起をつける改良が施されているVINTAGEの方が大きいからだ。極端な違いはないけど、多少VINTAGEの方が天板の温度は上がりやすい。
しかし700SLとVINTAGE 50だと700SLが圧勝だ。なにせ、天板に直接炎が当たる構造になっているので、余裕で100℃以上高い温度域まで上げられる。天板で料理をバリバリやろうと思うと、ある程度高い温度にならないと正直言って厳しい。長時間コトコト煮込むような料理の場合は640CBやVINTAGEでも十分対応可能だけど、揚げ物、炒め物などをする場合には700SLでないと無理だと思う。ホットケーキ、お好み焼きなども700SLでないと時間がかかりすぎてストレスが溜まる。天板での料理を重視する場合には700SLとVINTAGE 50であれば700SLを選択した方が良いと思う。
ここまで読んでVINTAGEに傾いていた心が折れそうになっている人もいるかもしれないけど、VINTAGEの魅力も捨てがたいものがある。薪ストーブでの料理の場合は天板を使わなくても、炉内でもできる。炉内で薪がボーボー燃えている時には炉内での料理は不可能だけど、熾き火になった時には、ほとんどの料理が可能だ。初心者のうちは余裕がなくて炉内に鍋を突っ込むのが怖いかもしれないけど、慣れてくるとなんてことなくできるようになる。炉内の熾き火を有効活用すれば、揚げ物、炒め物、ホットケーキ、餃子、焼き魚、焼肉など何でもできてしまう。天板でやらなくても、十分に大丈夫なのだ。
次に性能や炎について。
熱効率などの高性能ぶりは後発モデルのVINTAGEの方が優れている。これまでヴィンテージの特徴で紹介してきたように、新世代の薪ストーブならではのスペックだ。(700SLの定格出力が9KW、熱効率が75%に対して、VINTAGE 50の出力も同じく9KWだけど熱効率は84.2%・・・1割少ない薪の量、小さな炉内でも同じ熱量をたたき出す)
700SLの扉のレバーも他の回転式から比べたら全然気持ち良いし使いやすいけど、VINTAGEの車のドアのように開閉できて、高性能のマニュアルトランスミッションのスポーツカーのシフトレバーのような感触の開閉レバーは絶品だ。レトロでかわいいデザインなのに高性能で、なおかつ操作が最高に気持ち良いというのは捨てがたい。
そして炎は700SLは豪快に燃える印象だけど、VINTAGEは豪快から繊細までレバー一つで簡単にコントロールできる。700SLでもその気になれば二次燃焼の微妙な調整で繊細な炎を生み出せるけど、ちょっとコツがいるのに対してVINTAGEはとても簡単なのだ。
ヴィンテージの方が定価ベースでは10万円弱高いという値段の違いはあるけど、それは薪ストーブ単体で比べた場合で、煙突工事、炉台工事なども含めた設置費用をトータルで比較した場合には、実質的には本体の割り引きもあるらろうし、数万円程度の違いになってくるだけで、それほど極端な値段の差はないと思う。
正直言って、どちらもお勧めできる間違えない薪ストーブだ。どちらか一つしか選択できないとなると、本当に悩ましいけど、天板での料理を取るか、それ以外の部分を取るかで選択すると良いだろう。あとは見た目のデザインが気に入った方を選べば良いと思う。