生木でも外での焚き火の時には何とか燃えてしまう。山火事もそうだ。
そういう事例もあるせいか、「生木を投入した方が火持ちが良い」みたいなことを言う人もいる。バンバン空気を送って強引に燃やす焼却炉系の薪ストーブの場合にはそれもアリかもしれない。
生木が焚き火や山火事で良く燃えるのは、周囲に空気が無尽蔵にたくさんあるからだ。
しかし普通の鋳物の薪ストーブの場合には、温度を上げてから空気を極限まで絞る設計をして、高効率を追求をしている。炉内が酸欠状態に近いからオーロラみたいな炎になるのだ。そのため乾燥不足の薪を使うと、温度が低下して煤や煙が大量発生してしまう。乾燥不足の薪を使うと、空気を多く送り込まないと燃えてくれないので、燃費も悪くなる。また投入時に薪に含まれている水分で炉内の温度を下げたり、大量の冷たい空気で強引に燃やすことになるので、一度上がった炉の温度を急激に冷やして、炉の鋳物にダメージを与えて寿命が短くなる。良いことは何もない。
乾燥不足の薪を使っている人は、それが当たり前だと思ってしまっているのも無理はないけど、薪の乾燥で煤や煙の量だけでなく、室内の暖かさも全然違ってくる。見た目では同じような炎を上げているのに、薪ストーブの表面温度で50℃くらい違うのも良くあることだ。「いくらガンガン焚いても、なかなか暖かくならない」という場合には薪の乾燥不足の可能性が高い。ガラスが茶色や黒に煤けている場合は薪の乾燥不足だと断言できる。このメカニズムは簡単だ。薪に含まれる水分が蒸発する気化熱で、炉内の熱が奪われてしまって、薪ストーブの表面まで熱が伝わってきにくくなるのだ。
今の時期に「炎を楽しみたいけど、暑くなりすぎるのはちょっと・・・・」という場合に乾燥不足の薪を焚くのはありかもしれないが・・・。
薪の乾燥具合を計測するのに含水率計というのがある。
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慣れてくると手で持ったり触ったりした感触、重みの実感、叩いた音などで判断がつくようになるので、必ずしも必要な測定器ではないけれども、そんなに高いものではないので、持っている人も多いと思う。簡単な仕組みで電極を測定する薪に突き刺して、電気抵抗から含水率を割り出すものだ。使い方にはコツがあって、正しく扱わないと、全く意味のない数字が出てくるので気をつけよう。
測定する薪を直前に割って断面で計測する(表面の色の違いに注目)
空気に触れて乾いている表面を測定しても意味がない。薪の中心部分の一番乾燥してない部分で量らないと正しい数値ではない。面倒だとついつい測定する薪を割らずにやってしまいがちだけど、表面と内部では数値が10%以上違うことも多い。
電極を十分に差し込む
また金属部分を差し込んだ電気抵抗を計測しているので、十分に差し込んでいない場合には低い数値になるし、きっちり差し込めば高い数値になる。乾燥した薪は硬くなるので差し込みにくくなるけど、きっちり電極を差し込まないと、全く意味のない数字になる。差し込み方でいくらでも好きな数字に調整できてしまう。
この電極を十分に差し込まないと意味がない
薪の含水率の話をする場合にこのように「割って、その中央部分に、十分に電極を差し込んだ正しい数値」というのが議論のスタートだ。
伐採直後の含水率は40%オーバー
2年乾燥で15-20%程度
薪の乾燥は、伐採時期、樹種はもちろんのこと、日当たり、風通し、周辺の湿度、地面の水はけなどの保管する環境によって大きく左右される。そのため、一概に「何年」と言えないけど、理想は2年だと思う。木の内側の細胞内部の水分が抜けるには、それなりの年月が必要だ。
乾燥不足で含水率が30%の薪を焚いている場合には、含水率20%のものに水をかけながら火を燃やしているのと同じことだ。たとえば1回に炉内に投入する薪を3.5kgだとしたら、350ccの水をかけていることになる。つまり、薪をくべたあとにビール缶1本分の水を、かけているわけだ。このように考えると、乾燥不足の薪だと、燃やすたびに、どれだけ煤や煙が発生しているか想像がつくだろう。
そしてさらに、燃え方を追求していくと、含水率が20%と15%の薪でも、大きな違いがある。炎の回り方、薪に対する炎の絡みつき方が全然違うのだ。水分が多いと、炎が薪から逃げるような傾向があるが、十分に乾燥している薪だと、炎が薪に絡み付いてくるような燃え方になる。
含水率20%程度で投入直後に炎が薪に絡み付いてこない燃え方
薪に含まれている水分の気化熱は無視できない。燃え方、燃費、暖かさ、煤や煙の量など、大きく違ってくる。快適な薪ストーブライフのために、乾燥した良い薪作りを目指そう。
コメント
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水分の多少で、薪への炎のからみ方が違うとは気がつきませんでした。
勉強になります。
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yamadagagaさま:
いつも同じ乾燥具合のものを焚いていると気づかないですねぇ。
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毎年、シーズン終盤は乾燥薪が不足してしまいます。
(^_^;)
乾燥した薪の燃え方を知っていると、温度は上がらないし1次は絞れないしほんと泣けてしまいますね。
いくら乾燥してないからと言っても、炉内に突っ込めば水分は飛ぶかなと思ってましたが甘かったです。
(-。-;
この間薪棚を整理していたら、3年位忘れ去られていたケヤキが出てきて、コーン、カーン、ととても乾いた音で感動しました。
消防団の夜警使う拍子木を思い出しました。
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かなパパさま:
乾燥不足の薪を炉内に入れても、水分が飛ぶまでマトモに燃えてくれませんし、薪ストーブの周辺で乾燥させるなども無理があることは、やってみれば一目瞭然ですよね。
濡れた表面ならともかく、細胞の内側の水分を乾燥させるには時間が必要ということですね。
音が内部の状態まで判断つくので、一番判りやすい指標かもしれません。