薪ストーブの煙突について、よく言われていることの一つに「口元付近の1メートルくらいはシングル煙突でも良い」ってことがあるが、これはどういう根拠なのだろうか?「このくらいなら煤の付着も大差ない」「シングル煙突から放熱するから暖房に使える」というのが一般的な理由付けだと思う。
私はこれまでの経験から、メンテの際にシングル煙突部分にだけ極端に煤がついているケースを多く見てきたし、薪ストーブ本体からの熱だけで暖房は十分と考えているので、排気温度が冷えるデメリットの方が大きいと判断して、基本的に口元付近から二重断熱煙突を標準施工してきた。これはあくまで私の経験則と勘であって、数値で比較した根拠があるわけではなかった。
最近、ヒミエルストーブで口元付近の1メートルのシングル部分と断熱化した前後で比較したら劇的に燃え方が全然違うというという体験をした。焚きつけ時に煙の逆流が起きにくくなるし、空気を絞れるようになって燃費(薪の持ち)が明らかに向上した。排気温度が高いまま維持されるので、煙突から排煙が上っていく力が強くなるから、理屈から言えば当然のことなのだけど、これまでは具体的に測定値を数値で示すことができなかった。
【口元付近のシングル煙突の断熱実験】
天板より上部分はセラミックスーパーウールが見えるとなんだかなのでアルミフレキでカバーして耐熱塗料で処理
天板の下の背面部分は、正面からは見えないので、セラミックスーパーウールを巻いた状態
設置直後の室内側シングル煙突状態
今回、ヒミエルストーブの開発者の西岡さんが、北軽井沢店の開店準備中に持ってきてくれた後に、工場に帰ってから煙突の断熱の有無の違いによる、【炉内の燃焼温度】を複数回測定して、平均値をレポートしてくれた。
https://himielstove.com/2019-03-22-deta-anarytecs
シングル煙突の場合→570℃
二重断熱煙突の場合→660℃
口元付近のわずか1メートルだけを断熱するか、シングルで放熱させるかだけで、100℃近い燃焼温度の違い出てくるのだから、これは無視できる数字ではない。口元付近から断熱することで、それだけ炉内で効率良い燃焼をしていることを具体的な数字で示すことができている。室内煙突オールシングルは論外として、口元付近のわずか1メートルの断熱をするかしないかで、これだけの違いが出るという事実は興味深い。これまで私が推奨してきた、口元付近からの二重断熱煙突での施工が正しかったと、この検証から確信できた。
結果が良好だったので、今後のヒミエルストーブも排気部分は口元からオール二重断熱煙突のコネクターを組み込んだ仕様にバージョンアップすることを期待したい。
室内側シングル煙突でも、それなりには燃えるのだけど「それで問題ない」と言っている人は、その燃え方しか知らないわけで、もし二重断熱煙突と比較したら、誰でも燃え方の違いに気づくはずだ。煙突表面から放熱して排気温度が冷えてしまう宿命のシングル煙突の場合は燃焼用の空気を絞らずにに勢い良く燃やし続けないと良好な強いドラフトと燃焼を維持できない。一方で、二重断熱煙突の場合には、空気を絞ってもドラフトが弱まらないので高い排気温度を維持できて、燃費が良くなるというメカニズムだ。
実際に、これまで室内側シングル煙突での施工だったものから二重断熱煙突への入れ替え工事を複数行ってきたが、どのお客様も焚きつけの瞬間から「これまでと全然違う!」と、燃え方の違いを実感してくれている。「効果を実感できない」というお客様は皆無だ。こういう経験からも、自信を持って勧めることができたけど、このように数字で違いを示せると、より一層、説得力が増す。
現在使っているシングル煙突から、二重断熱煙突に入れ替え工事をして、もし効果を実感(体感)できなければ、元の状態に戻したうえで、返金する。その場合は、代金はいただかなくても良い。
薪ストーブ設置工事の時にはローコスト優先でシングル煙突を使ってしまいがちだけど、薪の消費が多くなるのでランニングコストが高くつく。二重断熱煙突にすれば空気を絞って省エネ運転できるので、薪が節約できる。薪を自分で作っている人は大幅な時間の削減ができるし、薪を購入している人は購入費用の削減ができて、長い目で見れば二重断熱煙突の方がコストが安いという結論になる。
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コメント
ウチは背面出しにして10センチだけは仕方が無いからシングルとなりますが、ガマン為て下さいと言われたのを記憶していますが、それで十分満足してます。1メートルもシングルにしてしまうと、それはかなり温度のロスが生じるのでしたね。10センチのお陰なのかドラフト不足で困ったことは一度もないのでこのレポートは納得出来るわ。
薪よう子さま:
さすがに10センチくらいは無視できるレベルだと私も思います。