「シングル煙突からの放熱により暖房できるから、シングル煙突の方が暖かい」というシングル煙突神話を、今でも本気で信じている人が多いのも無理はない。
何故なら、だるまストーブのような単純な構造の薪ストーブが、日本では広く一般的に使われてきたし、現在でも多く使われているからだ。最近の欧米の薪ストーブが、複雑な構造やシステムで設計されていて薪ストーブ本体の中で排気経路を長く確保して熱を極力、薪ストーブ本体で回収して室内に放出させる構造になっているのに対して、真逆の構造だ。単純な円筒形の縦型の鋳物のケースの中で燃やすだけなので、本体で熱を回収する前に、どんどん煙突へ排気が抜けていく。両者の違いが、以下のサイトにとても詳しく解説されている。まずはチェックしてみて欲しい。
はじめての薪ストーブまるわかりQ&A 誰にも聞けない【費用から薪の入手法まで】
だるまストーブの場合には、組み合わせるのがシングル煙突でないと部屋を十分に暖めることは難しい。薪の持つ燃焼エネルギーが薪ストーブ本体から、部屋に伝わる前に煙突に抜けてしまうからだ。だからこそ、煙突からの放熱で回収して部屋に伝えたいということで、トータルのシステムでシングル煙突の必然性がある。この場合は1か月に一度程度の煙突掃除の必要があるけど、そういうシステムを組まないと十分な暖房にならないのだから仕方ない。だるまストーブのユーザーや、それを見聞きして知っている人には、このイメージが定着している。ついでに言うと、「燃えすぎてヤバイ時に含水率の高い生木を投入して、燃え方を制御する」みたいな使い方も、こういう薪ストーブならではの運用ノウハウだ。
一方で、現在のCB(クリーンバーン)や触媒などの二次燃焼システムを持つ高効率の薪ストーブだと、本体だけで十分に薪の持つ燃焼エネルギーを回収して部屋に伝えることができるので、煙突から放熱させての暖房は不要となる。気密性の高い燃焼室で空気を絞ってゆっくり燃やす構造になっているので、乾燥した薪が必須で、「生木なんてとんでもない」というように、だるまストーブとはあらゆる面で真逆だ。

煙突からの熱で暖房?
もし、煙突からの熱の方が薪ストーブ本体より強烈で、それがないと部屋が暖められないということであれば、Aのように薪ストーブを屋外で(現実的には別室)焚いて煙突だけが暖房する部屋を通っていれば、それだけで十分ということになる。また、Bはよくある壁抜きの施工例だけど、これだと煙突からの熱がほぼゼロなので、部屋はあまり暖かくならないということになる。
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Bの施工で、煙突からの室内への熱の回収がゼロでも、十分に室内が暖房されることを否定する人はいないだろう。もし、Bのような壁抜きではなく、室内でに煙突を真っすぐ垂直に立ち上げて屋根から抜けば、理論的には煙突からの熱が室内にも放出されるが、それと比較しても大差ないことも想像がつくと思う。
現在の二次燃焼システムを持つ高効率の薪ストーブであれば、本来の設計通りに燃やしてやれば、本体から十分な熱を発生させることができるので、煙突から室内への熱の回収はゼロで全く問題ない。むしろ、シングル煙突を組み合わせて使うことで煙突から放熱してしまうと、排気温度の低下により上昇気流が弱くなってドラフトの低下、燃焼効率の低下、空気を絞りにくくなることでの燃費の悪化による薪コストの増加、煙突掃除などのメンテナンスコストの増加等、デメリットしかない。
薪ストーブという暖房器具だけでなく、クルマでも、住宅でも、料理の際の食材でも、購入する場合には「予算」というものがある。その予算の範囲で何を得られるかということを考える必要がある。話を膨らませると収拾がつかなくなるので、今回の記事では薪ストーブと煙突に焦点を当てて考えてみるが、だるまストーブとシングル煙突の組み合わせを否定するものではない。「トータルの予算が20万円しかない」という場合には、それしか薪ストーブ導入の実現の可能性がないからだ。「トータルで100万円出せる」という場合には、二次燃焼システムを持つ高効率の薪ストーブと二重断熱煙突の組み合わせが選択できるようになる。
その中間の50-60万円で考えている人が要注意だ。高効率な二次燃焼システムを持つ薪ストーブとシングル煙突の組み合わせは誤りなのに、二重断熱煙突にかけるコストをケチって、だるまストーブ用のシングル煙突を使うことで、本来の薪ストーブの持つ能力を発揮させられずに、無駄に薪を消費する割に「思ったより暖かくない….」ということになる。総予算が50-60万円で考えている場合でも、薪ストーブ本体は、格安品や激安品を選択しても、煙突だけは妥協しないで二重断熱煙突を使うことをお勧めする。相談してもらえれば、薪ストーブ本体はアウトレットや中古品などにして、総予算を抑えることも可能だ。
「料理のために天板広く使えるようにする」という場合に、例外的に薪ストーブの天板の上に鍋を置ける程度の高さだけシングル煙突にするケースもあるけど、基本的には薪ストーブの口元近くまで国産の二重断熱煙突を使って施工している。予算が厳しい場合には、国産ではなく中国製を使うなどの相談にも乗るけど、シングルにするという選択肢だけは最後まで取りたくない。
このように、かわはら薪ストーブ本舗では、お客様の予算と目的に応じて、個別に最善のプランの提案を行っている。図面だけ渡されて「とりあえず見積もり下さい」という依頼はお断りしている。エスパーじゃないから、ある程度のコミュニケーションが取れていない場合には、お客様が何を求めているか解らないから、提案もできないし、見積もりを作る意味がなく、お互いの時間の無駄になる。
もし「他店と競合させて1円でも安くしたい」というならば、たくさんの店の見積もりを取って、最後に持っていけば、最後の店は、使用部材や施工方法が同じ内容であれば、それより安くするのはわけないだろう。複数の見積もりを持って、自分が施工を任せたいと思える薪ストーブ店に最後に行けば良いだろう。ただ、そういう客がいるから、見積もり競争に勝つために、安い金額の見積もりを作成するために、シングル煙突を多用したり、二重断熱煙突だとしても価格の安い(=品質の低い)中国製(※)を使ったり、固定部材を省略するような手抜き施工などの薪ストーブ店が出てくるのも仕方ないことで、結果的に「良い部材を使った確実な施工」から遠ざかっていくばかりで、自分で自分の首を絞めているだと認識して欲しい。
※一口に生産国だけで中国製と言っても、様々なメーカーがあってピンキリで一概に言えないので要注意
この記事で、正しい煙突に対する理解が深まってくれて、快適で使い勝手の良い薪ストーブライフの実現のために、合理的な選択をするための役に立てば、うれしい。
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