最近は高気密高断熱の仕様の住宅が増えてきた。気密性が極めて高いので、新建材の接着剤から出る揮発成分などを含んだ室内の汚れた空気を24時間換気で強制的にファンで家の中の空気を屋外に押し出している「第3種換気」というのが一般的だ。
換気扇で空気を排気しているのと別の場所に、外気導入のダクトも設定されているけど、そのフィルターが埃で詰まるのは宿命だ。こまめに定期的にメンテ、清掃する人がどれだけいるかは判らないけど、その頻度次第では、外気の取り込み量が少なくなる。フィルターが詰まってない状態でも、24時間換気の影響で室内の気圧が低くなっているのが一般的だけど、メンテ次第ではさらに気圧が低くなる。
室内の気圧が低くなるので、薪ストーブとは非常に相性が悪い。本来であれば煙突から抜けていく煙が、そのルートを取れなくなる。気圧の高い屋外から、気圧の低い屋内へ煙突を通って下向きの気流が焚きつけ前には発生しているので、煙は煙突には上がっていかず、室内側へ出てきて、24時間換気の換気扇の方向へ目指して部屋の中が煙でモクモク状態になる。まだ、煙モクモクならマシな方で、もっと最悪なのは、焚きつけは強引に何とか24時間換気に打ち勝って上向きに煙突から煙が抜けていったとしても、薪が燃え尽きて排気が弱くなってきてから、熾火(つまり炭の燃焼)から発生する、目に見えない臭いもしない一酸化炭素が、室内側へ出てくることによる、一酸化炭素中毒のリスクが高まることだ。
これを防ぐためには、一酸化炭素警報器を取り付けることも一つの方法だけど、根本的には24時間換気のシステムの見直しも考えた方が良い。
「第2種換気」というのは「第3種換気」とは逆に換気扇で室内の空気を屋外に押し出すのとは反対方向に、屋外の空気を室内に強制的に押し入れる方法だ。コスト的には「第3種換気」とほぼ一緒だけど、あまり一般的、現実的な方法ではない。室内の気圧が低くならないでむしろ高くなるので、薪ストーブ的には問題が起きにくいけど、トイレやお風呂場などの臭いや湿気の多い部分の空気を積極的に抜くことが困難だからだ。
「第1種換気」というのは、屋外の空気を室内に入れるのも、その逆に室内の空気を屋外へ出すのにも、両方にファンを使って、入り口も出口の両方をコントロールする。これにより室内の気圧が乱れないので、薪ストーブを使う際にも問題が起きにくい。しかしコストが高くなる(50万円程度)のと、メンテナンスの手間が(月に1度のフィルターの清掃)発生する。
室内の気圧の問題だけでなく、そもそも、将来の新築住宅は、断熱性能が極めて良いことが求められるので、薪ストーブという熱源がなくても、昼間の日光、室内の冷蔵庫や照明器具、テレビなどの家電製品の消費電力による発熱と、人間の出す体温だけで十分で、エアコンさえも不要という構想もある。ZEH(ゼロ エネルギー ハウス/ゼッチ)と呼ばれている。
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/index03.html
そうなってくると、薪ストーブは、暖房のためではなく、炎を楽しむ趣味の道具くらいの位置づけになってくる。建築家や、設計士、工務店が薪ストーブの導入に反対するのも、合理的なので、施主の強い意志がないと実現しない。寒いから焚くのではないので、小型で発熱の少ない、サクっと焚ける機種が求められるようになってくるだろう。また、室内へ煙や一酸化炭素の逆流を起こしにくい運用ノウハウも求められるので、「高気密高断熱仕様の家やZEHを建てる施主が薪ストーブを絶対に導入したい」という場合には持てるノウハウを投入して協力するので、相談して欲しい。
国のZEHの目標が実際の施工現場に取り入れられるまでには、それなりの年月がかかるだろう。さらに進んで、全ての新築住宅がZEHになるのは、法律による強制化でもしない限りは、コスト面からも無理があると思う。だから、そこそこの断熱性能の新築住宅だって、今後も継続して建てられていくだろうし、そもそも気密性の低い既存の中古住宅や別荘に薪ストーブを設置する案件だってあるので、従来からある、中型、大型の暖房能力の高い薪ストーブが絶滅するわけではない。しかし世の中の流れ的には小型の薪ストーブの比率が上がってくるのは否定できないし、現実に今もそういう傾向を感じている。
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