「炉壁なしでも内装壁面に何センチまで寄せられる」とメーカーが明記している、ごく一部の例外を除いて、基本的には、薪ストーブを置いた室内の内装壁面は、炉壁で熱から保護してやる必要がある。
炉壁作成の際にはいくつか重要なポイントがある。よく知らない工務店や設計士の場合は、台所のキッチンパネルを貼る感覚で、内装の石膏ボードにそのままタイルを貼り付けてしまうケースもある。これは極めてリスクの高い施工方法だ。パネルやタイルそのものは不燃材かもしれないけど、直接貼り付けると、表面温度がそのまま石膏ボードの伝導してしまい、石膏ボードを固定している間柱が焦げてしまう。そこから発火のリスクがある。
そのため、石膏ボードと遮熱用の不燃版の間には、必ず25ミリ厚以上の空気層を設定して、その空気層が断熱材代わりとなり、石膏ボードに熱が伝わらないように配慮する。
空気層確保用の間柱についても、指定しないとここも垂木でやられてしまうケースも多い。ここも不燃材で仕上げないと垂木の低温炭化のリスクが出てきて意味がない。間柱は、鉄骨などでも良いが、お勧めはケイカル板だ。タイル下地で12ミリ厚のケイカル板を使うので、その材料を短冊にして3枚重ねれば36ミリの空気層を確保できる。その上に下地用のケイカルを貼る。そうすると余計な材料を用意することもないし、加工性も良く楽に作業できて合理的だ。
上部や側面については、木材でカバーしても問題はないが、どこかに通気のスリットを設定して、中の空気が流れるようにしておくと、さらに炉壁としての遮熱性能が高まる。
炉壁の高さについては、薪ストーブの天板高さから400ミリ位上までに設定するのが良い。最近の背の高い機種の場合は1000ミリくらいの高さの物もあるので、設置面から1500ミリまで程度で設定しておくのが無難だ。
また、タイルや石の接着についても、指定しないと化学系の接着剤を使われてしまうケースも多い。これを薪ストーブの炉壁に使うと、熱で溶けて石やタイルが剥がれるリスクが高い。必ず、モルタル系の接着剤を使うようにしよう。
当店で、薪ストーブ工事をお客様から依頼いただいた場合は、ここらへんの注意ポイントを工務店や設計士に伝えることができるが、お客様が薪ストーブ工事を工務店や設計士にした場合、当店の請負範囲は「煙突工事、薪ストーブ工事」だけなので、炉台、炉壁については口出しできる立場ではなくなる。きちんと打合せできる工務店や設計士であれば、問題ないけど「下請け業者は言われた通りに指示通りに黙ってやれば良い」と考えているところも多いのが現状だ。この場合は、施主さんがしっかりとチェックしないと、残念でリスクが高い炉台、炉壁となってしまうので、要注意だ。
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