今日はクリスマスイブだ。千葉市内の中央部ではライトアップされた街路樹がきれいだ。
クリスマスツリーに使われる「もみの木」はマツ科の針葉樹だ。
よく「薪ストーブでは針葉樹は使えない」とか薪ストーブ関連のブログで見かけるが果たして本当だろうか?また「針葉樹は煤が出る」とか「針葉樹は煙が出る」と言っている人もいるが、それは自分で検証した結果の言葉なのだろうか?それから「針葉樹だから敬遠しておく」というような書き込みも見かけることもあるが、何故なのだろう?
下の写真は針葉樹の代表選手の「杉100%」で焚いている時の様子だ。ご覧の通り、薪ストーブのガラスは全く煤けていないし、煙突からの煙もトップに近づいても全く目視確認できないほど透明だ。クリーンバーンやエアカーテンや触媒がついていない単純な中国製の鋳物の薪ストーブだけど、排気は極めてクリーンな状況だ。完全燃焼させてやれば熾き火になっていないで炎がボーボー出ている時でもこういう状態なのだ。
「ガラスが煤ける」とか「煙が出る」というのは広葉樹だからとか、針葉樹だからという樹種の違いによるものよりも、薪の乾燥度合いの影響の方がはるかに大きい。生乾きの広葉樹と、良く乾燥させた針葉樹では明らかに後者の方が煤も煙も発生しにくい。
もちろん広葉樹と針葉樹を、同じ程度に十分に乾燥させて条件を揃えてやれば、煙や煤の量は針葉樹の方が微妙に多い。しかしそれは炉内で燃焼中の木口に近い部分の炉内の壁への煤の付着の量をよく観察してやっと判別できる程度のわずかなもので、煙突からの煙で目視確認できるほどの大きな違いではない。
それでは、広葉樹と針葉樹の違いは何であろう?何故「針葉樹は薪ストーブでは焚いてはいけない」と言われるようになったのだろう?どうして針葉樹は多くの薪ストーブユーザーから毛嫌いされるのだろう?考えられる一番の理由は、その軽さだろう。軽いということはすぐに火がついて燃えやすいということだ。繊維の中に空気や油分を多く含んでいることから燃焼温度が高くなりやすいということもある。調子に乗って針葉樹ばかりをガンガン焚いていると薪ストーブの近くにいるのが苦痛になるほど熱くなる。簡単に薪ストーブ全体の平均表面温度が適温の250℃を100℃以上オーバーして350℃程度に達してしまう。温度管理できない人だと400℃くらいして薪ストーブを傷めてしまうこともあるだろう。こういう状況を避けるために「針葉樹は焚けない」と安全をみて言われているのだろう。それが一人歩きして「タブー」となってしまったのかもしれない。「触媒を高温で傷める」という理由なのかもしれないが、高性能で熱効率重視の設計のために樹種を選ぶ薪ストーブというのも本末転倒のような気もする。
また、広葉樹と同じだけの同じ熱エネルギーを針葉樹で得るためには比重が違うわけだから、より多くの量(容積、保管場所)を必要となる。そして燃え尽きるのも比較的早くて熾き火が残りにくいということから薪の投入頻度も高まることになるわけだ。最低限の量と労力で最大限の熱エネルギーを得ようとすると広葉樹という選択肢になるわけだ。
だからといって「薪ストーブで針葉樹を全く使わない」というのもどうしたものかと思う。すぐに火がついて、温度が早く上がりやすいという性質を生かして使ってやるのが一番合理的だと思う。焚き付け時の最初の段階で針葉樹の薪を使ってやり、炉内の温度が十分に上がってから広葉樹の薪にバトンタッチするというのが理想的な焚き方だと思う。それから炎の勢いが弱くなって温度が下がってきた時のブースターとして使うのにも最適だ。料理をする時に強い火力が欲しい時にも、広葉樹では絶対に得られない瞬発力や豪快な加熱ができる。こういうふうに適材適所での針葉樹の使い方をすると、貴重な広葉樹の薪の節約にもなる。
針葉樹を食わず嫌いで、せっかく入手できるチャンスがあるのに断ってしまうのは、とてももったいないと思う。一度断ってしまうと、次回に美味しい話もこなくなるので樹種を問わずにありがたく頂戴して活用するのがお勧めだ。広葉樹と針葉樹の割合を、8:2とか9:1くらいで持っていると合理的に快適に薪ストーブを運用することができる。