チムニーを、プロの大工さんが作ったからと言って、完璧に指定した寸法通りにできているとは限らない。寸法だけでなく、直角が出てない、水平垂直が出ているとも限らない。これは驚くことではなく、当たり前のことだ。機械でプレ加工したパーツのような木材をプラモデルのように組み立てるわけではなく、現場に合わせて木材を手作業で切り刻んで作っているから仕方ない。そもそも取り付ける家そのものだって、完璧に水平垂直が出ているわけではないし、材料である木だって、歪んだり、曲がったりしているのが現実だ。
そういう複雑で難しい状況の中で上手に材料を組み合わせて、最小限の狂いに納めようとした結果の建築物だ。神経質に「正方形になってない」みたいなことで、いちいち文句をつけてはいけない。完璧に水平垂直が出て一切歪みもなく曲がってない1ミリの狂いもない直方体のチムニーを作れる大工さんがいたら、奇跡に近い。厳密に計測すれば、どこか台形になっているのが普通だ。
まずは開口部分の寸法を確認してみる
730ミリで指定した外寸も最大突起部分を含めると735ミリ/450ミリで指定した内寸も454ミリ
上記寸法は、一辺を確認した実例だけど、他の三辺もミリ単位では全て違う。厳密に言えば、見た目は正方形でも、正確には台形で直角が出てないわけだ。このように数ミリの違いを問題にしたり、目くじらを立てても意味がないということを頭に入れておこう。数ミリの誤差だったら良い方で、慣れない素人がDIYで作成したら数センチ狂ってしまうことだってありうる。
もともと最初に指定した寸法は多少の誤差が出ても吸収できるように、ある意味サバを読んだものになっている。角トップが、チムニー上部にかぶさる寸法は一辺は750ミリだ。730ミリで指定したのは角方向に10ミリのクリアランスを確保して、スムーズにかぶさることができるように考慮している。逆に言えば数ミリの誤差があったとしても、問題ないわけだ。また内寸についても同様で固定金具の長さは400ミリなので、数センチ狂っていても取り付けの障害にはならない。
一番重要なのは、煙突の芯の位置を「この現場ではどこにするか」と決定することだ。馬鹿正直に計測したチムニーの中央の真芯を煙突芯にしてしまうと、角トップのカバーがチムニー外壁と干渉してかぶらなくなってしまうこともある。チムニー天端が台形になっていて、出っ張っている部分があるのだから、その一番出ている部分と角トップが干渉しない位置を、煙突芯に決定する。チムニーのど真ん中に煙突芯が来ることよりも、角トップがきちんと上からかぶさる位置を優先するわけだ。
「それだと芯がずれてかっこ悪いのでは?」と思う人もいるかもしれないけど、数ミリから数センチのクリアランスの違いは、離れてしまったら見ただけでは全く判らない。室内側に関しても化粧板で開口部分をふさいでしまうわけだから、見えなくなるので、問題ない。
あまりに誤差が大きい場合や外寸が750ミリに近い状況の時には、煙突をチムニーの取り付ける前に、角トップのベースを実際に天端に仮に置いてみて、チムニー外壁と干渉しないか確認した方が良い。問題がある場合には、その日の設置は諦めて、天端にさらに修正用の上枠&板金を追加するなどの対策を取る。
次にチムニー下部の室内側の煙突貫通部分を考えてみよう。先に説明した理屈と同じでチムニーが正確な直方体になっていないのと同じ理屈で、その下の貫通部分も真下にあるわけではない。つまり、チムニー下側の貫通部分の一辺の寸法を計測して2で割った位置が、煙突の芯になっているわけではないということを頭に入れておこう。
貫通部分の一辺が448ミリで、目安となる中心線を引いてみるけど、煙突芯で合わせた固定位置は数ミリずれている
チムニー天端かの固定金具から下げ振りを垂らして真下の位置を確認する
開口寸法に合わせるのではなく、実際の煙突が垂直になるように金具の位置を決めるのがポイント
開口部分の真芯から煙突が出てこなくても、この部分は化粧板で隠してしまうので、多少オフセットしていていも問題ない。通常は一辺が450ミリの開口に対して、一辺600ミリの化粧板で覆う。