薪ストーブのナラシ

今日は炎上しそうな話題の、薪ストーブの慣らしについて取り上げる。

薪ストーブの取り扱い説明書には「いきなり本格的に焚かないで、最初は焚きつけだけ燃やすくらいで、数回に分けて、少しづつ温度を上げていく」みたいな注意書きが書いてあるものが多い。それも、新品だけでなくシーズンごとに毎年とある場合もある。

焚きつけ程度のナラシで良いと言うのは、設置直後の取り扱い説明を時間をかけてしないで「火入れ式」と称して速攻で帰るための【ご都合主義】とも思えてしまうくらいだ。まあ、そういことではなく、あまりガンガン焚いて壊れてしまってクレームになると嫌だから、極端に安全側に振った説明になっているというのが実情だろうが・・・。

私は、説明書に書いてある、それは懐疑的に思っている。ナラシ不要で、いきなり温度の上がりやすい針葉樹の細割りを大量に突っ込んで空気全開で鉄が真っ赤になるくらい燃やして良いと言うわけではない。ゆっくりと温度を上げて二次燃焼するくらいの温度域まで上げてやらないとナラシとして各部をなじませる意味がないし、新品時の保護の油や塗料が焼ける程度までは表面温度も上げないと意味がないと思っている。

新車を乗る場合に最初の1-2か月目はエンジンを2000回転まで、3か月目は3000回転まで、4か月目は4000回転まで、5か月目は5000回転まで、6か月目は6000回転までみたいに回すというようなマニアックな(?)儀式的なナラシの影響を受けているような印象を受ける。

そういうナラシやって半年経過したら、エンジン始動直後に暖気運転しなくて良いのだろうか?また暖機運転した方が良いと仮定したとして、水温計の針が動いたら、いきなりスロットル全開でフル加速して良いのだろうか?水温や湯温が上がったところで、ショックアブソーバー内のオイルやブッシュ類のゴム、タイヤは冷え切っているのだから、いきなり全開走行が良くないことくらいは想像がつくと思う。

そもそも、薪ストーブは自動車のような定常的な回転運動による可動部分、摩擦部分というのは基本的にはない。触媒機のダンパーはどうなのかという突っ込みがあるかもしれないけど、これは常時動いている部分ではないので、この話題の時には無視して良いと思う。だから、新車のエンジン回転数に制限をかけるようなナラシは、薪ストーブには必要ないと思う。

薪ストーブの慣らしに必要なのは、各部のパーツの熱膨張率の違いでの歪みをなじませてやるという意味合いだと思うけど、ある程度は温度を上げてやらないと、その域に達しないと思う。

温度変化で薪ストーブから「カンカン・・・」という激しいビートを打つ音が鳴ることがあるけど、これもビビる必要はない。

それから、薪ストーブの素材による違いも重要だ。鋼板製の場合には耐火セメントで気密を取っていないので、耐火セメントで各鋳物パーツの気密を取っている鋳物製よりは、ナラシの必要は少ないのは明らかだ。また天然石のソープストーンの場合は素材そのものに含まれている水分を飛ばしてやるという意味合いもあるので、ナラシの必要性は高くなる。このように、薪ストーブの素材の違いによって、ナラシがどれだけ必要かというのは違ってくる。

ソープストーン製の薪ストーブの場合はナラシの意味は大きい

いずれにしても、ある程度までは温度を上げてやらないと、ナラシの意味がないということになる。それじゃあ、どうすれば良いのかということになるけど、最初からフルパワーでガンガン焚くということではなく、常識的は範囲でゆっくり温度を上げていって、二次燃焼するくらいまで上げてやれば良いと思う。

自動車にたとえると、新車を初めて走らせる時にアクセルを床まで踏んで、タイヤを鳴らしてフル加速しないのと同じ感覚で、普通に流れに乗って公道を走らせる程度で良いと思う。

真冬の厳寒期にフルパワーで焚きたくなることはあるかもしれないけど、初回はナラシだと思ってゆっくり温度を上げていくという感じで問題ないと思う。

また、新品時だけで良いのか、シーズンごとに毎年ナラシしないといけないかという話題もあるけど、これだって、いきなり厳寒期に焚くわけではなく、少し肌寒い位の時には薪ストーブを全開で焚き続けなくても、部屋の温度が上がるので、自然とナラシをしているのと同じようなことだと思う。あまり神経質になることなく、普通に焚けば、良いと思う。

薪ストーブを長持ちさせるためにナラシをする、しないよりも、極めて重要なことがある。それは、薪の乾燥だ。乾燥不足の薪を使うと、薪の投入の際に炉内温度が極端に下がる。水をぶっかけているのと同じだからだ。つまり、薪の投入ごとに、せっかく上がった炉内温度が下がり、水分が蒸発してから、炉内温度が上がりということになるので、各部が膨張、収縮を繰り返すことになる。一定の温度を保つのが長持ちの秘訣なので、これはいただけない。ナラシを気にする人(こだわる人)はナラシと同時に、薪の乾燥具合も気にする事が、賢明で合理的だ。

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コメント

  1. CI-10GLユーザー より:

    かわはら様

    ありがとうございます。とてもスッキリしました。
    火を入れた後、ストーブの鋳鉄が膨張するに従って「カン、カン」という音を立てることがありますよね。あれを聞くのが好きなのですが、「もしかするとこの音がするということは、膨張・収縮を繰り返している証拠でストーブにはあまり良くないことなのでは?」と思ったのが、今回お聞きしたきっかけでした。

    いずれにせよ、アメリカ・ヨーロッパで永く販売されているモデルがそう簡単に壊れることはないはずで、それほど神経質になる必要はないのだと肝に銘じます。それより薪の乾燥ということも改めて意識しようと思います。
    本当にありがとうございました。

    ところでクルマに例える部分、ある自動車評論家も同じことを書いてましたよ。

    • かわはら より:

      CI-10GLユーザーさま;

      お役に立てて良かったです。

      おっしゃる通り、温度が上がる時にカンカンという音が激しくビートを打つことがありますよね。機種によっては物凄い音でびっくりしてしまう人もいるかもしれません。でも、ある程度の音はどんな機種でも発生しますので音は気にしないのが良いと思います。

      クルマ好きなので、ナラシと聞くと、ついつい、たとえがクルマになってしまいます。自動車評論家の方も同じことを書かれているのですね。

      ナラシとは逆にアフターアイドリングの件でも昔のターボ車はエンジンをすぐに切るとターボの冷却オイルが焼けて良くないから、しばらくアイドリングして温度を冷ましてからエンジンを切った方が良いという神話もあったと思うのですが、それも私は迷信だと思っています。自動車評論家ではなく、ルマンレーサーに直接訊いたことがありますが、グループCカーでターボが真っ赤になるくらい全開で走ってきた直後のピットイン給油でエンジン止めるけど、そんなこと(ターボの軸が焼けるなんて)ないって即答してくれました。