薪ストーブで薪を燃やそうとしても、なかなか炎を上げて燃えずに煙を大量発生させてしまい、室内が煙だらけになってしまった経験はあるだろうか?慣れないうちはけっこうやりがちだと思う。
そんな時には基本にたちかえって考えてみると良いと思う。モノが燃えるには三つの要素が必要になる。
「熱」と「酸素」と「燃えるもの」だ。
薪ストーブに置き換えてみると「炉内の高い温度」「空気の量」「薪」ということになる。
この三つの要素のどれ一つかけても良好な燃焼にはならない。
焚きつけ時には「空気」と「薪」があっても「熱」がないので薪は炎を上げて燃えない。とりあえず細めの割り箸くらいの乾燥した焚きつけ材ならば簡単に火がつくが、そこから太い薪を燃焼に必要な温度に上げられるかどうかがポイントとなる。まあ、いきなり焚きつけ材から太い薪に熱を加えるのは無理なので、焚きつけで加熱できる細い薪をまずは燃やし、それで次は中くらいの薪を加熱し、そしてその燃焼で太い薪を過熱していくというふうにステップを踏んでやる必要がある。そうしているうちにだんだんと炉内の温度が上昇していき、鋳物の鉄が温まっていく。
上手く薪を組んで熱が効果的に薪全体に回るようにしてやることがコツだ。途中で崩れると消えてしまうのは熱が蓄積されなくなることで、熱源から遠くに薪を置いても意味がないのはそこに熱が到達しないからだ。「薪は寄り添って燃える」という言葉をどこかで読んだことがあるが、一本だとなかなか燃えない薪も二本以上組んでやることによって、できた空間に「熱」を溜め込むことができること、組んだことによって炎の立ち上がる場所に「燃えるもの」が存在して、さらに上昇気流によって空気の流れが発生して「酸素」が補給されるからだろう。これも三つの要素が必要だということを一文で表現した名言だ。
焚きつけ時に煙がたくさん出てしまうのは、いきなり焚きつけ材で加熱できる以上の太い薪を投入しているケースが考えられる。
しかし、それよりも多いのがこれだろう。無理なく加熱できる程度の細めの薪を投入しても煙が出るというケースだ。これは薪の乾燥を疑ってみると良い。水分が多い薪はまずはその水分が蒸発してからでないと燃えない。水分が蒸発すると気化熱で周囲の熱を大量に奪い去る。つまり温度を下げてしまい燃焼に必要な三要素のうちの一つがない状況に陥る。これから焚き火をしようとするのにその種火にむかって水をかける人はいないと思うが、乾燥していない薪を使うということはそれと同じことをしていると考えられる。これをやっていると大量の煙やタールや煤が発生して煙突の詰まりがとても早くなる。焚きつけに成功して炉内の温度が十分に高くなった場合にも言えることだが・・・。
ある程度、炉内に熾き火が溜まっていると太めの薪をその上にポンと置いてもすぐに炎が上がる。それは既に「温度」「空気」が炉内にある中に「燃えるもの」が追加されたからだ。薪の温度が発火点以上に達してすぐに火がつくということになる。
今までしっかり燃えていたのに扉を開けると炎が引いてしまうのは、開けた扉から冷たい空気が大量に炉内に入って炉内の温度が下がってしまうからだ。扉を開けてからどこに薪を入れようかと考えているとそういう状況になる。投入前にあの空間に入るのはこの大きさの薪だと準備しておいて、さっと扉を開けて、さっと扉を閉めるのが効率よい燃焼を保つコツだ。
良好に燃えている時に空気の量を絞ると炎の出方が少なくなり、完全に空気を遮断できるモデルの場合だと全部絞ると消えてしまう。これは「熱」と「燃えるもの」があっても「酸素」がなくなって燃焼の三要素が満たされなくなったからだ。
炉内の温度によって燃焼の仕方も違うし、薪の種類や乾燥度合い、薪の太さや組み方で空気の通り方が違ってくるので、その時に必要な空気の量も常に違うので、炎の出方を見ながら空気の量を調整してやると良いと思う。こういう炎の時は何℃くらいと温度計でチェックしていると温度計を見なくてもだいたいの温度は温度計を見なくても判るようになる。ちなみに今朝、この写真の状態で「多分220℃くらいだろう」と予測して放射温度計で測定したら212℃だった。