薪ストーブが良好に燃えるためには「薪の乾燥」と「煙突の性能」が極めて重要な要素となっている。
実際に使ってない人はあまりイメージできないかと思うが、薪ストーブの使用経験のある人なら異論を唱える人はいないと思う。薪の乾燥についてはまたの機会に触れることにして、今回は煙突について書いてみる。
シングルの煙突で横引きの比率が大きくてもそれなりに燃えてしまうのは、強制排気式の石油ストーブやボイラーなどだ。精製された燃料をファンで強制的に空気を送り込んで燃やしてやるために排気もそれなりの勢いがついているし、煤も出にくい。これらはあまり煙突の性能には左右されずに単純に屋外に排気を出すためのパイプという感じでの配管でもそれほどの問題はない。
しかし薪ストーブの場合は、機械的、強制的、電気的に排気を送り出すわけではなく煙突内での上昇気流(ドラフト)での排煙で燃焼が決まってくる。燃料も精製されているわけでないので上手に燃やさないと温度も上がらないし、煤や煙が発生してしまう。煙突が薪ストーブから排気を引っ張ってくれないと薪ストーブ内で良好な燃焼をしてくれない。そのため他の種類のストーブとは違う高性能の煙突を要求される。
具体的には内径150ミリで二重断熱煙突で屋根からストレートに立ち上げるのがベストだが、現実的にそのままの形で実現できないケースも多いと思う。その場合は壁から横に引いて屋外で立ち上げる形となるが、縦引きと横引きの比率を2:1程度にして、最低でも屋外部分は断熱化すると良い。
よく屋内部分は「シングルの方が煙突からの廃熱が期待できるから良い」と言われるが、実際には薪ストーブ本体からの熱が圧倒的に出ているので屋内部分を断熱化していても室内の暖房に関してはそれほどの違いは出ない。それよりも、排気温度を高いまま維持して排煙できるメリットを考えたら室内側も断熱化した方が良いと思う。
私の場合、一番最初に内径106mm、外径150mmのシングル煙突を組み合わせて二重断熱煙突をDIY、自作して使い始めた。しかし、内径が細いため屋外側のエルボ部分でちょっとの煤の付着でも排気抵抗になり一度、煤が詰まりだすと加速度的に詰まってしまっていた。
このため室内側は106/150mmの二重断熱煙突のままで、屋外のエルボ部分から上側を150mmのシングルにしてみた。ドラフトは内径が増えた分、若干強くなったがシングル化したために煤の付着が多くなって今ひとつだった。
そこで今度は150mmのシングル煙突部分にセラカバーSという断熱材を巻いて完全に断熱化してみた。その効果は絶大で明らかにこれまでとは違う燃焼となった。作業直後は試し焚き、慣らしということでちょこっとだけ焚いての様子見のレポートだったが、ここのところ寒い日があったので数時間の連続燃焼させてみた。
連続稼動して、しっかりと温度が上がった場合の煙突の熱分布も非常に興味深いものがある。
これまでシングルの時はトップ部分に近いところは煙突を素手で余裕で触ることができる程度だった。具体的には60-70℃程度だろう。つまり排気温度もそれくらいまで下がってしまっていたわけだ。
そして、断熱化した場合断熱材の表面はこれまでと同じ程度の温度だが、内部のシングル管の部分の温度が熱くて触れないくらいに高くなっていた。断熱材を巻いていないトップ部分を触ってみたものだが多分100℃以上だと思う。つまり排気温度も数十度上昇しているわけでその分強いドラフトとなっているわけだ。
ちなみにこの写真は全く煙が見えないが、薪ストーブの稼動時のものだ。