写真も撮ったけど、動画の方が判りやすいので、まずはこちらをご覧いただこう。
日本初上陸のフィンランド製、FARMI社のWP36の動作
このように、長い原木をプロセッサー横のログリフターに乗せれば、油圧で引き上げてくれる。そのまま横に転がしてステージに原木をセットできる。ここまでくれば自動的にどんどん原木を飲み込んで、薪の形で、ベルトコンベヤーから出てくる。まるで工場で大量生産しているかのような印象だ。
今回は狭い現場だったし、その状況から、原木をセットするのが大変だった。傾斜地に下の方に積んである原木を引っ張り上げるのがボトルネックになって非効率だった。
ミニユンボでクレーンが届くところまで引きずり出してから吊り上げたので、一本づつをプロセッサーに運ぶ作業に時間を食われた
ステージにクレーンで直接乗せる
しかし十分に広い現場で、プロセッサーのログリフターのところと同じレベルで平行に原木が積んであってゴロゴロ転がしてくるだけでセットできたり、ユンボにつけたアタッチメントのグラップルなどで原木をつかんで、一気にステージに乗せられる状況であれば、飛躍的に効率アップする。
今回は最悪に近い状況だったので、1時間で1立米(0.5t)程度の生産量だったけれども、条件を整えれば、1時間で8立米(4t)程度は楽勝だろう。つまり、1時間で1ユーザーの1シーズン分の薪の必要量ができるだけの能力はあると感じた。
オイルタンクに設置されている温度計で油温管理
2時間程度稼働させて60℃になったら油温を下げるために機械を休ませてやる
オイルクーラーがついてないので2時間程度の連続運転をすると、油圧の作動オイルの油温が高くなってくる。60℃程度になったら15分から20分程度休止させて、油温を下げてやる。オイルクーラーをつければ連続運転も可能だけど、現実的には、そのくらいの頻度で休まないと、人間もバテてしまうからちょうど良いと思う。
最初の休憩時には、既に大量の薪の山ができている
薪プロセッサーがあればチェーンソーで玉切りして、薪割り機で割るのとは比較にならない早さで、楽ちんの薪の量産ができる。個人宅で1シーズンで使う量ならば、条件さえ整えば1時間で楽勝だろう。貴重な休日の時間を全部使わなくても、下準備なども含めて、わずか1週末分の二日間だけで、薪作りが完了してしまう。これは画期的で革命的なことだと思う。これだけサクっと薪ができてしまうと、チェーンソーと普通の薪割り機でやるのが馬鹿らしくなってきてしまうくらいだ。
長い原木をステージに乗せるだけで、見る見るうちに薪の山が積みあがる
実際に生産される薪の質も良い。普通の薪割り機だと節がある部分は砕けてボロボロになりがちだけど、そういう部分でもスパっと切断して綺麗な薪になる。強力な油圧で、鋭い刃で一気に割っているからだろう。
節がある部分も崩れずに綺麗な切断面
プロセッサーがあれば効率的に薪作りできるけど、プロセッサーのオペレーター以外にも数人いた方が合理的だ。
まず原木をステージに乗せる作業員がいる。ユンボ&グラップルがあれば一人でも良いけど、ユニックの場合はクレーンを操作する人間とワイヤーを原木に巻く人間の二人が必要になる。
それから、ベルトコンベヤーに出力されるところで、薪を選別する担当もいた方が良い。刃の位置は原木の太さに合わせて、高さを変えられるけど、たまに太くて「このままでは薪にするのはちょっと・・・もう一回か二回くらい割りたい」みたいなのが出てきてしまう。それをベルトコンベヤーの上から排除する係も欲しい。可能であれば、排除する係と、排除した薪をプレス部分に再投入する係の二人いれば、さらに効率アップする。(それくらい油圧プレスの動作速度が速い)
選別する人員をおかない場合には、ベルトコンベヤーから出てきた太過ぎる薪を、別途用意した(普通の)薪割り機で割る係がいても良いかもしれない。これはプロセッサー以外に機材や人員をどれだけ投入できるかという現場の状況次第だ。
いずれにしても、最大効率で、最短時間を追求するのであれば、オペレーターも含めて5人程度が一組で作業すれば良い。
また、この薪プロセッサーで、どんな原木でもやっつけられるわけではない。
プロセッサーに入るのは最大で直径30センチ程度の電柱状の真っすぐな原木だ。理論的には直径36センチだけど、現実の原木は若干の曲がりもあるし、枝や節が出っ張っていたりするから。だ。それより太いものは、事前にチェーンソーで玉切りして、最大寸法が直径30センチ程度まで周囲を玉ねぎの皮をむくかのように削ぐように割ってやる必要がある。そのため、上記のベルトコンベヤーで選別する作業員については、チェーンソーや斧を扱える人の方が良い。(選別の作業の必要のない理想的な直径の原木をプロセッサーで処理中に、太い原木の下処理をすれば合理的)
原木の長さについては上記の条件を満たしていれば無制限だけど、現実的には汎用性の高い35センチの長さの薪を作ることを考えると、その倍数で35センチ、70センチ、140センチ、280センチ(3メートル弱)、385センチ(4メートル弱)である程度統一して事前カットしておくのが合理的だろう。一番扱いやすいのは3メートル弱だ。(ログリフター上での重量バランスが良く、手で支えなくても上がってくれる)
今回、薪プロセッサーを初体験した私の感想は、当たり前のことになるが、圧倒的なパフォーマンスだけど、一個人で所有するにはちょっと、パワーを持て余してしまう側面もあると思った。金額的なものでも簡単には出せないということも、もちろんあるだろう。
中国製でない故障しにくい、原木を問わない、まともな強力なパワーの薪割り機は50万円程度するわけだが、この薪プロセッサーが250万円程度だから、薪割り機をそれぞれが買ったと仮定して50万円づつ出資して5人で共同購入して、5人で作業すれば、それぞれのユーザーの1シーズン分の薪作りの作業ならトータル二日間だけで終わらせることができる。いくら強力な薪割り機があっても、チェーンソーで玉切りして、薪割り機で処理していては、トータル二日間で1シーズン分の薪製造は無理だろう。この薪プロセッサーを使えば一日目は太い部分、曲がりや枝などの下処理で翌日の薪プロセッサーに効率良く投入する準備、二日目は実際の薪作りの段取りでの作業想定で二日間あれば確実にできる。そして、薪の山ができたら、現場で山分けして、その後は自分の都合の良い時に自宅の薪棚に持ち帰るだけだ。
別の方向性で、薪プロセッサーを所有するのではなく、既にある今回紹介したこの薪プロセッサーを呼んでの「出張薪作りサービス」というのもアリだと思う。1年に一回、一日だけ使う巨大な物を保管するのも大変だ。20-30t程度の原木を購入するなり、伐採するなりして一か所に集めておける現場があれば、4-5ユーザーが集まって、回送費用、燃料代、機械の償却費、オペレーター人件費、ユンボリース料などの経費を分担してこの薪プロセッサーで、一気に薪作りするのだ。シーズンオフのほとんどの週末を薪活に充てることを考えたら、貴重な自由に使える時間を得られるメリットは大きい。具体的な金額は、現場の場所、大型トラックが入れるかどうかなどの環境、作業員や重機の手配条件により全然異なるので、詳細に状況を伝えていただいて、その都度見積もりになるけど、仮にそれがトータル10万円だとして、5人で集まって割り勘すれば一人あたり2万円だ。この金額で、1シーズン分の薪がたった1-2日間でできてしまうとなれば、どうだろうか?斧の値段、チェーンソーやソーチェーン、燃料代、オイル代など、そして自分の貴重な時間を日給換算したら、どっちが得で合理的かは、計算するまでもないだろう。
もちろん「自分で伐採して、玉切りして、斧を振って割るのが趣味で気持ち良い」「いくら時間をかけても良い」「自分で買った道具や消耗品以外は1円も出したくない」という人はそれを否定はしない。
しかし「ちょっと薪作りが大変」「もっと楽したい」「他のことをする時間が欲しい」「薪は単なる燃料」と考えている人は、「薪プロセッサー共同所有」「出張薪作りサービス」も検討に値すると思う。薪作りの時間の節約によるメリットは極めて大きい。
コメント
こんなすごい機械があるんですね。びっくり!
海外(たしかイタリア)の映像でみたんですが、あっちには薪工場があって、
ベルトコンベアで高いところからポトポト落ちてくるんです。
(日本にも同様のがあるかも知れませんが知らないもので、すごいなーと思いました)
それのトラックに載せられるタイプみたいな感じですね。
おぼうさま:
機械化、省力化を極限まで極めるとこうなりますねぇ。
内緒コメント at 2016/04/25(月) 14:30:58さま:
書き方判り難かったかもしれませんね。
一人あたり10万円ではなく、一回呼ぶのに10万円で、5人で分担すれば2万円づつということです。
さらにその一回一日の薪プロセッサーの作業で、5人分の1シーズン分の薪が一気に生産できるという意味です。
つまり、それぞれ一人づつが2万円の負担のみで1シーズン分の薪がゲットできるということです。
内緒コメント at 2016/04/26(火) 07:44:10 さま:
普通の薪割り機とは生産能力が桁違いですのでイメージ湧かないから無理もありません。
実物が稼動しているところを見ると、薪作りの概念が変わって、薪割り機でちまちま割っているのがアホらしくなります。(どうせ斧で割らずに機械化するならとことん省力化したほうが良いと思います)
確かに、薪にかける時間や手間を考えるなら2万程度でしかも2日程度で1シーズの薪が入手できるならアリな事ですね。
にーやんさま:
合理的な判断だと思います。