煙突の立ち上げ方

既存の住宅に後から薪ストーブを設置する場合には煙突は壁や窓から外に出して屋外で立ち上げるというやり方になりがちだ。この方法は比較的簡単に配管経路を外に出しやすいのと、雨漏りの心配が少ないという特徴がある。しかし、デメリットも多い。まず横引きが長くなるので排煙の速度が落ちてドラフトが弱くなる。熱気は上に上昇するのが自然の物理現象だから横引き部分があれば抵抗になるのは明らかだ。横引き後の立ち上がり部分で引っ張られることで横に抜けていくが、どうしても流速は落ちる。その結果、焚きつけ時に煙が室内側へ漏れてきたり、燃え方が今ひとつだったりする。さらに問題となるのは煙突が煤で詰まりやすくなるということだ。特に屋外側のL字のエルボ部分に煤が溜まりやすくなる。シングル菅で施工した場合には特にそうだ。したがって煙突掃除の頻度を高める必要がある。

一方、新築の設計段階から薪ストーブを導入すると判っている場合には、煙突を屋根からストレートに立ち上げることも容易にできる。横引きによる抵抗もなくスムーズに加速度的に熱気が上昇してくれるので煙突の引きも良く強いドラフトが得られる。焚きつけ時から煙が室内側に漏れることもなく、常に良好な燃焼が期待できる。このため煤の付着もほとんどなく、薄っすらと灰が付着するような感じになるので煙突掃除の頻度も少なくて済む。屋根の部分からの雨漏りの心配も設計時から煙突を立ち上げる前提で屋根を造作すれば良いので解消できる。デメリットとしては屋根を抜く部分、天井や床を抜く部分などの熱対策のため断熱二重煙突を使う必要があってシングル菅で壁から外に出すのと比べて施工が難しく費用がかかることだが、薪ストーブを運用、維持するに当たってのメリットを考えると絶対にお勧めだ。

屋根抜きの場合でも、この写真のように必ずしも吹き抜けにする必要はない。一階の天井がふさがれていても一階から二階に階段を通ってゆるやかに暖かさは上がっていくし、煙突からの放熱も若干は期待できる。その場合でも煙突からの放熱を期待してシングルにするのは間違だ。高温になるシングル煙突が二階の触れる部分にあればうっかり触って火傷ということになるし、そのまま床や天井で抜くのは木部が低温炭化(火災)の危険にさらされることになる。必ず木部を抜くところ、目に見えないところは十分な断熱対策が必要となる。シングルの場合は45センチ程度木部から離さないと危険なので90センチ四方の空間を確保する必要になり、木造建築では現実的な施工ではなくなる。

吹き抜けにした場合には上部に大型、強力、高効率、静かなシーリングファンを設置することをお勧めする。薪ストーブで温められた室温が上の階に上がってしまい、設置階が十分に暖かくならないというケースも考えられるからだ。以前以下のリンクのサーキュレーターを使って一階の居間の熱気を二階に素早く送り込んでやろうと考えて試したみたことがあるが、ファンの音ばかりうるさくて思ったほど効果がなくてお蔵入りしてしまった。このように高回転、高速、風の面積が狭いものよりも、低回転、低速で風の面積が広い(本物の)シーリングファンでないと吹き抜け部分の対策にはならない。

かわはら薪ストーブは全国

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