東日本大震災の時から施工店に放置され続けたお客さんがいた

東関東大震災の揺れで薪ストーブ本体が炉台の上でずれてしまって、施工店に点検を依頼しても、メンテナンスを依頼しても、レスポンスが異常に悪くて、結局来てもらえなくて、それ以降怖くて薪ストーブを、ずっと使えていないということで、SOSを受けた。

直後ならともかく、もう震災から何年も経過しているから「忙しくて行けない」ということはないだろう。

「設置だけはするけど、メンテナンスはしない」というポリシーの店のようだ。

店の名前を聞いて納得した。
これまでも、煙突掃除の依頼を受けて「どこで設置したのですか?」と訊く度に判で押したように同じ名前が出てくる、千葉県内の、あの店だった。

究極のローコストのメンテナンス性を無視した施工で、吹き抜け上部の天井付近の二重からシングルになる部分で無理やりスライドさせているパターンなので、断らざるを得ないケースもあった。

煙突を外してしまったら、再度取り付けるためには、室内足場を組まないとならない。つまり再度煙突工事をやり直しというパターンで、最初からメンテナンスしない前提の施工というわけだ。

それが、どこの店かというのは他店の営業妨害になるので敢えて言わないけど、そういう店でも長年営業を続けていけるというのが不思議だ。

普通に考えると評判が落ちて、お客さんが減っていって、営業できなくなるように思うけど、私が薪ストーブ店をやる前からずっと続いている誰でも知っている有名な老舗なのだ。

お客さんは、工事する前にはそのお店が将来に渡ってお世話してくれると思っていたのだろうけど、現実にはこういうふうに「薪ストーブ難民」となってしまっている。

施工前に「薪ストーブの機種をどうしよう」なんて舞い上がっている時には、設置後のアフターフォローのことまで考えないし、お店に「メンテナスをやってくれますか?」と確認したって、その時には調子良い返事しかこないだろうから、販売店を見分けるのは難しいのが実情だと思う。

他店で施工、購入したお客さんだとしても、SOSを受けたら可能な限り救ってあげたいので、行ってきた。
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鋼鈑製の珍しい薪ストーブだった
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地震で滑って動いた傷痕が生々しい
一応お客さんが自力で動かして、だいたいの位置に戻したそうだ。
一度スライド煙突を取り外して、煙突の芯の位置を確認して、正確な位置に修正した。

薪ストーブ本体が振り子のように動いてしまったわけだけど、屋根裏の固定金具の取り付け状態も確認しないとまずいので、屋根裏に上がって点検した。
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屋根裏の固定金具の状態を確認した
固定状態は問題なく、ぐらつき、ガタ、緩みなどもなかったので、煙突掃除&位置の修正を行って、とりあえずは無事に使えるようになった。

冷静に分析してみると、私の場合は煙突荷重を受け止められる固定方法で建物の構造躯体に3点で煙突を取り付けるけど、この店は一点だけで煙突を取り付けていて、なおかつそれが構造躯体ではないのだから、地震の際に煙突がそこを軸に大きく振れてしまって、薪ストーブがずれてしまったのだろう。

このように他店で施工した工事内容を見ると、とても勉強になる。コストダウンのために、私には考えられないような驚きの施工例を「これでもかっ!」と見せつけてもらえるからだ。

この現場で気になったことは、他にも色々ある。

・薄い鉄板だけの狭い炉台
・角トップ本体内部で断熱していないので結露が垂れてきた染みが観察できる
・防鳥網や防風板を省略したショボい角トップの採用
・煙突そのものが角トップ内部で露出していて、コネクターの切り欠きから雨や湿気が煙突の断熱材に侵入する仕様
・角トップの蓋を取り外すネジがボルトではなく+ネジのためナメてしまったら取り外し困難
・そのネジをコーキングで埋めてしまって、最初からメンテナスする気が全くない施工

【参考】
■メトス角トップの内部構造

■メトス角トップ内部への断熱材の敷き込み
■メトス角トップの蓋の防風板
■メトス角トップの蓋の取り付け
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角トップから垂れてきた結露の染み
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六角ボルトではなく+ネジ、しかもコーキングで埋めた角トップの蓋
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防鳥網や防風板が省略されて、煙突本体そのものが外部に露出しているショボい角トップ
同じ工事代でも原価を極力絞って安全性とメンテナス性を無視して利益がたくさん取れる工法の工事だけ行い、利益のあまり出ないメンテは最初から一切やらないと割り切る。

得た利益を広告宣伝費に惜しげなくつぎ込んで、新規のあまり深く突っ込みを入れないお客さんを探す。こういうやり方をすれば、利益をがっぽり確保できて、儲かってウハウハ状態なんだろうなとは思う。

見えない地味な部分だから、どうせ、ほとんどのお客さんは判らないことだ。問題が発覚するののは、滅多にない大震災の時とか、きちんとしたメンテナスを行うとした時くらいで、こういう施工でも逃げ切れてしまうケースの方が多いということだろう。

ほとんどのお客さんは薪ストーブのメーカーや機種だけを気にするけど、煙突のメーカーや生産国まで気にすることは稀だし、まして施工方法や煙突固定位置までお客さんが関与することは、ほぼないだろう。

同じお金を払って、同じ薪ストーブ本体を設置しても、どの店を選ぶかで、煙突工事の内容でこれだけの違いが出てくるわけで、この事実を知って欲しいと思う。

かわはら薪ストーブ本舗は、老舗の店のようにはガッポリ稼げなくても、長期に渡って安心して使用できる設置で、メンテナンス性を重視したプランを求めるお客さんを相手にして、適正な価格(利益)と高品質を両立させて、これからも真摯に対応していくつもりだ。
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コメント

  1. かわはら より:

    鍵コメ at 2016/01/10(日) 16:01:29さま:
    状況了解しました。
    薪ストーブシーズンが終わった頃に、毎年京都へ煙突掃除に行っているので、その際に寄らせていただければと思います。
    ご都合の良い曜日は土日でしょうか?
    いずれにしても、とりあえずはメールを下さい。ブログの右側のサイドバーにメール送信フォームがあります。