薪ストーブと地震

4つの海底プレートが接する日本列島。一つのプレートがもう一つのプレートの下に沈み込んで押し下げていきバネのようにエネルギーを蓄積して、ある日突然耐えきれなくなって元通りに戻ったり、断層が破壊することで発生するのが巨大地震だ。

火山の噴火も最近あった。現在でも噴煙が立ち上っている火山も多い。

プレートが日本列島の下に沈み込む際の摩擦で溶けた岩石でできた地下のマグマの存在を思い出させてくれる。
【参考URL】南海地震の特徴

ここ近年でも、2011年に東日本大震災、2016年に熊本地震と大きな地震が頻発しているが、今後も日本中のどこにいたとしても、巨大地震に被災する可能性はゼロではない。


そんな巨大地震の発生の際に、稼働中の薪ストーブはどうなるのだろうか?

一概に「こうだ」と断言はできない。

地震の揺れ方が縦揺れなのか横揺れなのか、震度、震源からの距離、地盤、断層、基礎の状態、建物の構造や耐震性、築年数などによって一つとして同じ事例はなく、再現性も確保できないことだ。

現実に隣り合った家の片方は倒壊して、片方は一見すると、ほぼ無傷みたいなことさえもある。

このようにパラメーターがたくさんありすぎて、一般化した話をしにくいのが現状だ。

薪ストーブや煙突の施工も、それぞれが自分の立場と経験で「これでいいんじゃないの?」っていう程度の対策をしている。

私の場合は基本的には煙突は三か所で建物の構造部分に固定を基本に考えているけれども、正直言って、この対策だけでは巨大地震への備えは不十分だと感じている。

煙突掃除に行った他社施工の物件だと、地震対策どころか煙突固定金具のビスが木の下地ではなく石膏ボードに刺さっているだけで、煙突に手で触れただけでグラグラ揺れるような事例が現実にたくさんある。

ルールもないし、ガイドラインもないのが実情だ。

薪ストーブというのは、大きな地震の揺れを受けると簡単に煙突が外れて転倒する。
【参考】

煙突の固定場所を軸にして振り子のように移動するだけで外れないケースもあるけど、それは横揺れでなおかつ揺れ幅が少ないラッキーな状況だっただけである。

【参考記事】 東日本大震災の時から施工店に放置され続けたお客さんがいた

東関東大震災の揺れで薪ストーブ本体が炉台の上でずれてしまって、施工店に点検を依頼しても、メンテナンスを依頼しても、レスポンスが異常に悪くて、...

運が良く転倒しない場合でも、燃焼中の薪ストーブの煙突が外れたらどうなるか?その実験は、東日本大震災のだいぶ前の2008年に、私は既に行っている。

それまで順調に燃えていたのに煙突を外した途端に白煙を噴き出す。ドラフトを失い炎が消えてしまうのだから、考えてみれば、ある意味当たり前の現象だ。

【参考記事】 煙突のない薪ストーブ

薪ストーブのシステムについて、本体だけでなく、もう一つ致命的な弱点がある。

それはスライド煙突だ。
いくら煙突を建物の構造にガッチリ固定したところで、薪ストーブの口元付近でスライド煙突を使って煙突の高さを調整したり、取り外し可能になっているわけだ。これをビスで固定したところで、巨大地震のエネルギーではビスなど簡単に切れてしまう。

ビスが切れない場合には煙突ごと破壊して、結局は外れてしまう。だいぶ前にスライド煙突なしの驚きの施工を見たけど、これって地震対策のための最先端の施工だったのかもしれないと思えるようになったくらいだ。

【参考記事】 驚きのスライド煙突なしの施工

今回、ビンテージのレクチャーで訪問した愛知県のお家では、なんと、スライド煙突なしで、薪ストーブの口元から、煙突を上部に積み上げていくという煙...

いずれにしても、燃焼中の薪ストーブの煙突が外れた状態になれば、家が地震で倒壊しなくても一酸化炭素中毒、酸欠で命を落とすリスクがある。

幸い命を落とさず済んだ場合には家の中は燻されたような火災現場特有の煙の臭いが抜けないだろう。

家財道具や落ちてきた天井などの下敷きになって身動きが取れない状態で、長時間不完全燃焼の排ガスにさらされたらどうなるかは想像つくだろう。

また、薪ストーブが転倒した場合は耐熱ガラスが割れて熾火や火のついた薪が炉の外に飛び出して火災につながる可能性が高い。

そうなったら焼け死ぬことになるわけだ。

薪ストーブがやっと乗るようなガラス前面から30センチ程度しか取ってない良く見かける炉台ならイチコロだろう。

フローリングとフラットではなくステージのように高く上がっていて狭い炉台は転倒のリスクが極めて高い。

耐震対策だけでなく、日常の使い勝手からも私は前面ガラスから70センチ程度のフラットな炉台を推奨しているけど、それは地震の時の安全性にもつながっている。

巨大地震の際には煙突が外れなくても薪ストーブが20-30センチ程度平行移動してしまうことは珍しくないのだ。

地震で動いたり転倒しないように、薪ストーブの脚をアンカーボルトで炉台に固定するという方法もあるが、それも単純にやれば良いという問題ではない。

欧米製の鋳物の薪ストーブの場合は脚というパーツがボルトで本体に固定されている構造になっている。

巨大地震の際にはアンカーボルトで固定したことによって、本体と脚を固定しているボルトが折れたり曲がったりすることで、脚が外れてしまって転倒という逆効果となってしまう可能性も高い。

鋳物そのものの素材自体が衝撃には弱く割れやすい。

むしろ固定しないで振り子のように揺らしてやった方が安全なケースもあるので慎重な判断が必要だ。その点では脚が溶接されて本体と一体構造になっている鋼板製の場合、積極的にアンカーボルトで固定する方法も良いと思う。

要するに薪ストーブの構造によっも対策は異なるということだ。

【参考記事】 ハンターストーブの足の機能性

炉台は厳密な水平が確保されていることは、まずない。そもそもタイル、煉瓦、石などの素材自体が平らではないし、下地が水平の平面だとしても、貼り方...

日本製の鋼板製薪ストーブで、震度5以上の揺れを感知して煙突ダンパーと吸気ダンパーを瞬時に閉じて消化する機能を持つ商品がある。

これだと他の物より安全性は高いように思われるが、転倒して耐熱ガラスが割れてしまっては全く機能しないので、それなりの固定手段の確保が重要になってくる。

【参考URL】 カツデンアーキテクツHOMRA

カツデンアーキテックがおとどけする「Japan STOVE」コンセプトの薪ストーブ「HOMRA(ホムラ)」のオフィシャルサイトです。日本の伝統に基づいたデザインや、対震機能、独自の燃焼システムを動画を交えてご紹介します。

設置場所や環境、取付方法、薪ストーブの機種などの条件があり、現場によって一件一件全部違うので、このようなブログの記事では一般的なことは書けても、それぞれの各現場における最適解というのは書けない。個別の具体的なケースを見ながらコンサルするしかない。

ちなみに従来の通常のやり方でのスライド煙突使用時の巨大地震に対しての弱点については、上記の「スライド煙突なしのびっくり施工」とは違う別の手段で解消するオリジナルの「かわはら式固定」を思いついたので、私が施工依頼を受けた物件では、今後は可能な限り積極的に取り入れたいと思っている。なお、この新しいオリジナルの煙突の固定方法は、現在受けている最新の案件で、既に提案済みで施工待ちの状態だ。
新築、リフォームに関わらず、もし私が過去に施工した物件でも、この必殺技を追加で導入したい場合には相談に乗る。現場の状況次第だけど10-20万円程度の追加費用で実現可能だと思う。

日常の使い勝手やメンテナス性の良さはもちろんだけど、万一の耐震安全性まで十分に配慮した薪ストーブ設置工事を心がけていきたいと、私は常日頃から思っているけど、『地震対策を特に重視する』という場合には、依頼の段階(設計時点)で明言して欲しい

地震対策のためには、それなりの追加費用が発生するので、問答無用で見積もりに入れるわけにもいかない。

あくまでオプション扱いなので特に指定がない限りは従来のやり方を取らざるを得ない。

「地震のことは想定しない」「地震がきたら諦める」という選択肢もありだし、「現在考えられる最善の対策をしておく」という選択肢もある。

どちらを選ぶかは人それぞれで強制はしないし、どちらにでも柔軟に対応する。

なお薪ストーブの地震対策について、当店で施工する場合はもちろんだけど、他店で施工する場合には全国どこでも有償の5万円にてコンサルする。

工務店や設計士とも連携して「家が倒壊しない限りは大丈夫」と言えるレベルを目指して最大限に取り組みたいと思う。

地域を問わず、日本各地に耐震安全性の高い薪ストーブの施工を広めていきたい。

かわはら薪ストーブ本舗で「メンテナンス性」と並び重視していることが、「耐震性」です。 薪ストーブ使用時に地震が…

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