東日本大震災の当日、私は長野県で薪ストーブ工事のために車を運転していた。もう、あと少しで現場へ到着する位の頃に、それなりの走行距離だったので、ガソリンが少なくなってきたのでガソリンスタンドに立ち寄った。そこの店員さんが「大きな地震があったみたいですね」と話しかけてきた。私は車の走行中はラジオをつけていなかったので、全くそのことについて知らなかった。それでラジオをつけて情報をはじめて知った。
現場に到着してからテレビを見せてもらった。その時に原発建屋が水蒸気爆発してキノコ雲を立ち上げる衝撃的な動画を見て、大ごとになることを認識した。津波で建物が流される絵は繰り返し放送されたけど、キノコ雲の絵は昼間のニュースだけで、夜のニュースでは放送されなくなった。視聴率を取りたい放送局が、この衝撃的な絵を急に流さなくなったのは不自然なので、報道規制が入ったのだと想像がついた。
長野県は震源から離れていたので、特にその時の地震の影響はなく、そのまま予定通りに工事を完了した。
しかし、その後の情報で、関東地方に戻るのが困難なことが推測できた。道路が大渋滞して帰宅難民が発生していたり、ガソリンスタンドも売り切れ続出で、無事に帰れるとは思えない状況だった。そこで、数日間、お客様の家に泊めさせてもらって、様子見をした。最終的に道路状況がましになったところで帰路についた。車両はレンタカーのユニック付きのトラックだったので、普通はガソリン満タン返しなのだけど、どのガソリンスタンドも完売で給油できなかったので、事情を話して、走行距離分の燃料代を支払うことで対応してもらった。
関東向けの原発が稼働しなくなったためか、停電が続いた。電気もこないので、薪ストーブによる暖房、煮炊きができて、とても助かった。薪棚の薪は崩れたが、薪の備蓄があれば、ライフラインが止まっても何とかなるということを強く実感した。
また、震災後は薪ストーブ設置工事の仕事よりも、地震による崩れた屋根瓦の復旧作業などが多くなった。屋根の上での作業中にも、余震で揺れて、怖かった。この仕事は自車のガソリンがなくなってしまって、ガソリン販売が開始されるまでは中断となった。
茨城でもそれなりに揺れて、当時施工した薪ストーブは設置位置から10-20センチ程度動いたというレベルだった。煙突から薪ストーブが外れて、転倒したという事例はなかった。そのため、当時は今ほど、薪ストーブの地震対策は真剣に考えていなかった。
しかし、その後の熊本地震では、薪ストーブと煙突の接続が外れて、薪ストーブが転倒したという事例が発生したことを知った。
震源からの距離や揺れ方の違いで、被害が全然違うということを認識した。
そこで、薪ストーブが煙突から外れないように、転倒しないようにと考えた結果が「かわはら式耐震煙突固定法」による、薪ストーブの地震対策だ。簡単に言うと、薪ストーブの口元付近の二重断熱煙突を壁面に固定して、その固定の上にスライド煙突を設定するという施工法だ。
内装の石膏ボードの内側に煙突固定用の木下地を入れる必要があるので、新築時は事前打ち合わせが必要だし、リフォーム案件の場合には、一度内装の石膏ボードを剥がす必要がある。そのためオプション扱いで、希望される方に対して施工している。
私のアイデアの薪ストーブを上から固定するだけでなく、薪ストーブ本体を床面に固定するという方法も京阪エンジニアリングで開発された。薪ストーブの底面にダンパー内蔵の専用の器具で床面に固定するという地震対策だ。これはネスターマーティンのS33, S43, H33, H43の4機種に取り付け可能な設計となっている。
「かわはら式耐震煙突固定法」と「ネスターマーティン専用耐震装置」の両方で万全の地震対策を期した現場もある。
このように、かわはら薪ストーブ本舗では、希望するお客様に対しては、可能な限りの地震対策を取っている。もちろん、その分の予算は増えてしまうけど、ライフラインが止まるような災害対策として、その費用(地震対策を何もしない場合より+10万円程度)を許容できるという場合には相談して欲しい。
薪ストーブの地震対策については、日本全国どこでもその必要がないと言い切れる場所はないので、地元の施工店で、そのノウハウを真似したいという場合には、情報提供するし、必要な部材の提供も行うので、相談して欲しい。
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