今年は新築時に薪ストーブを導入したいという相談を何件も受けた。
プランが確定する前のラフアイデアの段階でダメ出しすれば快適で合理的な薪ストーブの設置プランが作成できる。もう既に建築プランが決まって図面が出来上がってしまっている場合には大きな修正はできないが、プランを決める前ならば、私は「絶対に吹き抜けはない方が良い」とアドバイスしている。
薪ストーブを知らない設計士が作る二階建て住宅の図面はハンで押したように吹き抜けが設定されている。これだと二階は暑く、薪ストーブを置いてある一階はなかなか温まらないということになりがちだ。温かい空気は上昇するので物理の原則を考えれば自明のことだ。シーリングファンをつけたところで気休めにしかならない。吹き抜けと階段の位置を住宅全体の対角線上に配置して家の中の空気を循環させるように設計してやればある程度は回避できるが、大きな吹き抜けがあると一階リビングが温まるくらいガンガン焚き続けると二階は灼熱地獄になりがちだ。
一階のリビングに薪ストーブを設置した場合に吹き抜けがなくても階段から自然と暖気は二階に上昇していく。この場合は一階も二階もバランス良く快適に温かくなる。薪ストーブを知らない人は薪ストーブ一台で全館暖房なんてできるわけないと考えているが、実は吹き抜けなしでも二階建ての家の中が全部快適な温度に暖房できるのだ。これは我が家で実証済みなので自信を持って断言できる。石油ファンヒーターなどの暖房だと部屋を閉め切って一部屋だけに暖気を溜めるのに対して、薪ストーブの場合はドアを開放すれば家中の部屋から廊下まで全部温めるパワーを持っているのだ。
今回は建築プランを立てる前に私に相談してくれた後輩の家が完成して引渡しを受けたと連絡をもらったので、見に行った。まだ入居前なので家具も何もなく、リビングには薪ストーブだけしかない状況だが、吹き抜けなしで、薪ストーブの真上の二階部分(階段上の熱気が溜まるところ)が洗濯物干しスペースという私のアドバイス通りの家となっている。生活観が出る洗濯物をリビングで見ることもなく、薪ストーブの熱と煙突の配管からの放熱のW効果で洗濯物を乾かせる合理的なプランだ。
高気密高断熱の家なので外気導入の配管も炉台を貫通していて、スムーズな焚きつけと、稼動時に薪ストーブへ向けて進む周辺からの冷気の移動の軽減が期待できる。不要な時にはシャッターを閉じておけば良い。こういうのも後付けで対策するよりも合理的だ。