これまでプロトタイプでの燃焼試験を繰り返し、その都度、改良を重ねて、限界まで性能を突き詰めることができた。
当初の設計の「直火料理が天板できる」「オーブン室でのオーブン料理」という目に見える機能はもちろんクリアしているが、ロケットストーブならではの「立ち上がりの良さ」「燃費の良さ」という特徴と性能も盛り込むことができた。
よくある開放型のロケットストーブはヒートライザーでの二次燃焼で効率が良いけど、排気を大気中に放出するために室内で使うわけにはいかない。また、ヒートライザー直下の高温部分で効率良く燃焼するけれども、燃え尽きて、そこへの薪の供給を連続して行う機構がないと燃料切れで消えてしまうという弱点があった。
そこで、私が設計した室内用のロケットストーブは、ヒートライザー上部にカバーをつけて排気を下部に降ろして、本体下側から排気するようにした。燃焼室を大きく設計して長い薪を投入できるようにして、ヒートライザー下部から、扉方向に向かって連続した燃焼が続くようにした。他にも細かなノウハウや怪我の功名みたいな必殺技も盛り込んでいるが、それは今後の製品化の際に発表しよう。
立ち上がり時間の短さは特筆できる。焚きつけ後15分あれば余裕で安定燃焼に入る。今回のテストでは10分で安定燃焼した。普通の鋳物の薪ストーブが安定燃焼に入るまで30分から1時間くらいかかることを考えると、半分以下の時間しかかからないことは特筆できる。
それから燃費も明らかに良くなっている。薪の投入頻度も長くなり、消費量は体感的には鋳物製の薪ストーブの1/2程度位の印象だ。(ロケットストーブを実験したことのある人なら、少量の薪で驚くほどの熱量を得られることが想像できるだろう)
料理にフル活用できて、立ち上がりが良く、燃費も良いという、私の考えている薪ストーブの理想形が実現した。
天板の蓋を取り外すことによって鍋底に直火を当てる機能を盛り込んだ
土鍋ご飯、中華鍋でチャーハンなども天板で調理可能
オーブン室は余裕で200℃オーバーになるので、パン焼き、ピザはもちろん、一通りのオーブン料理が可能
(この写真は初期の立ち上がり時の温度測定で、この後には230℃くらいになった)
オーブン室に、芯にシナモンパウダーを入れたリンゴを突っ込んで45分
オーブン室で作った焼きリンゴは絶品だった
燃焼能力も半端じゃない!
炉内にやっと入るサイズのMEGA薪を突っ込んでも、完全燃焼させてしまう
炉内のオーロラ炎も美しい・・・
私が知っている限りの欧米製の鋳物の高級ストーブと性能を比較しても遜色がないどころか、むしろ勝っていると思った。もちろんデザイン性、インテリア性、寸法など、全てのユーザーに受け入れられない要素がたくさんあるので、商品として爆発的に売れるようなものではないことも認識しているけど、これがハマるユーザーには、面白い薪ストーブだと思う。
今回プロトタイプが完成して、オーブン室や直火調理機能を省いた、純粋な暖房器具としての薪ストーブを普通の形で小型版を作った方がたくさん売れると思った。
しかし、プロトタイプで一台だけ作るのと、量産化モデルを作るのでは、投資金額が何倍も多くかかることになる。プロトタイプはフレームとパネルをビスで固定して分解修正可能な構造を作ったが、量産化モデルの場合には溶接もしくは折り曲げで作成することになるし、ある程度まとまった数を作ることになるので、私、個人の今の財力だけでは無理がある。今後の展開については慎重な判断が必要だ。(とりあえずノウハウはつかんだので、量産を実現させるためには出資を募るなり、アイデアを企業に売り込むなりの方法を取るのが現実的だと思った)
コメント
突っ込みます。
(薪の消費量は2倍)は、1/2ですね?
あれから、早速CADで描いてみました。流路だけのものですが、考えなければいけない点が色々みえてきます。仕上がりましたらFAXします。
収穫の多い、楽しい一日でした。
という資金調達方法もありますね。
ピンはねが約2割です。(サイトにより多少の差があるようです)
普通にクレジットカードで決済しても、3.5%?はかかりますので、ネットでうまく話題をさらうことができれば、ある程度の資金を調達することもできるのでしょうが、自分が調べたところ、プロジェクトの平均額は50万程度。
中には大規模な物も実現できているのですが、そういうのは、ネット関連の、いわゆるガジェット系という印象が強いです。
構造としては、溶接してしまうと修理などが効かなくなると思うのですが、初期の生産の段階では、ボルトやリベットによる接合として、不具合が発生したら、修理しやすいように保険をかけておくのはどうでしょうか?
そうすることで、鉄板の厚みなどを最適化できますし、蓄熱に関しては、ソープストーンなどを併用して、見た目を云々する、という部分も考えていけると思います。
日本でソープストーンの代用を調査したレポートを何処かで見たんだけど、山口さんから、ソープストーンの輸入を頼まれて(これは、ロットが大きすぎて対応できませんでしたが)その時に調べてお伝えした記憶があるので、思い出したら、自分の方のブログでもで書きます。
イタリアのペレットストーブだと、タイルなのか、なんか焼き物のカバーが付いているものもありますが、燻し瓦なんかを鎧のように纏わせると、結構魚っぽくてかっこ良くなったりしないでしょうかね?
あと、個人的に、どうしても欲しい機能がありまして、それは加湿機能。
水道直結、ボールタップ給水で、エコファンと同じくペルチェ素子発電で強力に加湿して欲しい。
うちは毎日20L位加湿してもカラカラに乾燥してしまっているので、水を補給するだけでも大変ですし、加湿器の電気代ももったいないので、是非に。
風の森さま
あ!おっしゃる通りです。本文を訂正しておきました。
楽しみにしています!FAXじゃなくてもメールにPDF添付でもOKですよ。
single02さま:
資金調達の方法は色々ありますよね。最近話題のクラウドファウンディングも面白そうですね。冬の薪ストーブシーズンの忙しい時期が一段落したら、考えてみます。
プロトタイプの作成は不具合の洗い出しも兼ねています。鉄板の厚みなども含めて問題点、改良点は認識できているので、いきなり溶接または折り曲げで量産モデルの設計に入れると思います。(改良を前提としてこのプロトタイプは分解可能な設計にしています)
当然、蓄熱も考えていますよ。蓄熱用の石を外装パーツとして使うバージョンと、埋め込んで隠すバージョンです。
加湿機能はストーブ本体に盛り込むのではなくオプションで比較的簡単に作れると思います。それはまた今度お会いした時に話しましょう。
ヤフブロ時代から、ひさびさにアクセスしました。このプロジェクトは現在はどうなっていますか??
税金泥棒さま:
市販モデルの設計図は完成して、今は少しづつ部品を制作中です。
来シーズンには発表できると良いなという状況です。
楽しそうですね。
ペール缶で作ろうと色々調べたのですが、耐久性が厳しいですね。
税金泥棒さま:
ペール缶で消耗品と割り切って、バンバン使い倒すのが良いと思います。
使うと問題点を洗い出しできますので、作成ごとに改良していくのも面白いと思います。