毎年、煙突掃除の依頼を受けていたお客様で、普段はそれほど煤が多くなかったので、今年も普段を同じかと思って煙突掃除を行ったら、普段の何倍も煤が出てきてびっくりした。
話を聞くと、建築廃材をもらったので、そればかり焚いていたということだった。もちろん建築端材でも燃えないことはないし、きちんと温まるが、煤が大量発生するということは避けられない。
建築端材のみ焚いていると、煙突が詰まって燃焼効率が落ちて、さらに煤が大量発生するという悪循環に陥る。建築端材のみ焚いている場合には、シーズン終了後に1回ではなく、場合によってはシーズン中のどこかで一度煙突掃除した方が無難だと思う。
建築端材を入手すると、早く処分したいということで、そればかり焚きたくなる気持ちも判るけど、焚き付けの温度を上げる段階で使って、一度温度が上がってからは普通の広葉樹の乾燥薪に切り替えた方が合理的だ。初期の温度を早く上げたい段階では、燃えやすく温度の上がりやすい針葉樹である建築端材を積極的に使い、炉内温度が上がってからは、火持ちの良い広葉樹の薪と、適材適所で使いこなしてやるのがベストだ。
針葉樹オンリーでも、炉内温度が上がり過ぎないように安心して焚ける設計のメーカーも出てきているので、建築端材オンリー、針葉樹オンリーで焚きたいという場合には、薪ストーブの機種の選定も重要になってくる。具体的には、国産では岡本のAGNIシリーズ、海外製ではネスターマーティンであれば、開発時点から針葉樹でも燃焼温度を上げ過ぎずに焚けるようになっているので、過燃焼による破損のリスクは少なく、安心して使える。
薪ストーブは適切な温度管理で使ってやるのが重要なポイントだ。そのためにも、樹種による燃焼温度の違いは意識しておいた方が良い。
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コメント
かわはら様
こんにちは。現在の薪ストーブは、クリーンバーンと触媒方式、大きく2つの燃焼方式に分けられると思います。ネスターマーチンを始め、多くのメーカーが針葉樹OKとカタログに謳っていますが、こうしたストーブと針葉樹NGストーブの違いとは何なのでしょうか?
私はSCANのCI 10GLを使っていて、これもカタログ表記では針葉樹OKとなっています。果たしてそれを鵜呑みにして、針葉樹を多く炊いてもいいのか不安になりました。ご意見を伺えれば幸いです。
CI-10GLユーザーさま;
薪ストーブの燃焼方式を大きく二つに分けると、おっしゃる通り触媒式とクリーンバーン式になりますね。しかし、厳密に言うと、触媒式にも、クリーンバーン式には当てはまらない第三の燃焼方式もあるということになります。便宜上、触媒式ではないからクリーンバーン式と呼んでいるだけです。
カタログに針葉樹OKと明記しているメーカーの燃焼方式は、厳密に言うと、一般的なクリーンバーン燃焼とは違う、この第三の燃焼方式ということになります。
クリーンバーン式とはお使いのCI-10Lもそうですが、クリーンバーンノズルから二次燃焼用のエアーを炉内に吹き付けて、未燃焼ガスを燃やす仕組みを持つ薪ストーブという定義になるかと思います。
このような機構(クリーンバーンノズル)を持たずに、独自の仕組みで高温になった二次燃焼用の空気を炉内に供給できるような設計になっています。普通の単純な鋳物製だと、鋳物製の板を組み合わせて作っているので、構造上、厳密な気密性の確保が無理なのですが、ネスターマーティンに関しては鋼板のケースを鋳物内に入れ込むことで、また国産岡本の場合は高い鋳物の制作技術により一体成型で四面のパーツを作っていて物理的な気密性を確保しています。これによりクリーンバーンノズルなしで二次燃焼用の空気の供給が可能になり、針葉樹オンリーで焚いても高温になり過ぎない設計となっています。
参考までに岡本のAGNI-CCの構造についてはこちらの記事にレポートしています。
https://kawahara-stove.com/blog/2018/31612
メーカーの方でもユニークな鋳物の一体成型についてもウェブサイト上で言及していますが、その点についてはあまり強くアピールしてはいないのが残念です。
https://www.nbk-okamoto.co.jp/agni/support/user_top.html
ネスターマーティンの構造については以下の記事でレポートしています。
https://kawahara-stove.com/blog/2012/6357
一般的にクリーンバーン機の場合は針葉樹オンリーでガンガン焚くと、過燃焼、高温になり過ぎる傾向にあると思います。かと言って、その状態で空気を絞り過ぎると、煤や煙が大量発生します。適度に広葉樹と混ぜて焚いたり、針葉樹は焚き付け時の炉内温度が低い時に限定して焚くのが無難と考えています。上手に樹種を使い分けて温度管理するのがポイントです。炉内温度が高くなってからの針葉樹の使用は、本文でも書いた通り薪ストーブのダメージを与えるリスクが高いと思います。クリーンバーン機で針葉樹を焚いてはいけないのではなく、適切に状況に応じて焚けば良いというのが私の考えです。具体的に言うと全体の薪の量の2-3割が針葉樹という比率で使えば、問題はないかと思います。
かわはら様
丁寧な回答ありがとうございます。とても参考になりました。
AGNIは構造といいデザインといいとても惹かれます。