お客様が来店された時に「室内が煙モクモク、ガラスが煤けてどうしようもないから、33年前の薪ストーブを買い替えたい」ということだった。薪ストーブを交換すれば問題が解決すると思ってしまうのも無理はない。
その足で、お客様と同行して、現場を確認すると、古いモルソーにシングル煙突が接続されている状態だった。お客様のおっしゃる通り、ガラスが煤けている上に、割れていて天板も錆だらけで、買い替えたくなる気持ちも理解できる。
薪ストーブ本体に関しては、ガラスが割れたのは交換すれば良いし、錆だらけなのは塗装しなおせば良い。それらの表面的なことは、あっさり解決する。それよりも重要な修理か買い替えの見極めのポイントは、内部のバッフル板の変形や破損、本体の構成の鋳物の破損、変形の方だ。バッフル板が取り外せない程変形していたり、天板にヒビが入っていたら、修理をするより、最新モデルに買い替えた方が安上がりだ。
今回の現場だと内部、外部ともに大きな問題はなく、買い替えるよりも修理する方が合理的だと判断できる状況だ。商売的にはお客様が買い替えたいと言ったら、そのまま新品に入れ替えてしまう方が利益になるけど、貴重なビンテージ物が、まだ現役で使える状態であれば、使い続けてもらった方が良いと思った。
薪ストーブを最新モデルに入れ替えたところで、シングル煙突を接続しているのであれば「煙モクモク、ガラス煤け」という症状は改善しないと断言できる。本体は入れ替えずにそのまま継続使用、煙突を入れ替えれば、あっさり解決する問題だ。そこで、塗装とガラス交換の修理で見栄えを良くして、煙突をシングル煙突から二重断熱煙突に入れ替える工事を提案した。
熱気球のバルーンにバーナーを焚いて熱気をためて上昇することと同じ原理だ。地上から上昇した後に、ずっとバーナーを焚かなければ、いずれ地上に落ちてしまう。
煙突トップ部分で、排気温度が外気温と同じになるまで下がってしまったら、ドラフト(上昇気流)はゼロで煙突から抜けていかない。室内側に煙が出てきて、ガラスも煤けるのはそういう単純な理由だ。
シングル煙突でもきちんと燃やすためには、常時、空気全開のフルパワーで、燃費と、薪ストーブの寿命を無視した焼却炉状態で使う必要があり、それは現実的ではない。空気を絞ってしまうと、薪ストーブは暖房器具ではなく、たちまち煤と煙の発生装置となる。
空気を絞って燃費の良い状態にして排気が弱くなってもも、ドラフトが維持できるためには、二重断熱煙突は必須なのだ。
ガラスを固定している金具を締めるボルトが固着していて外れなかったので苦労した。ボルトを外さなくても金具が回せて動かせたので、無事に交換できた。金具が動かない場合には、ボルトの頭をサンダーで切断して、ネジのタップを切りなおす作業が必要となる。
また塗装前は養生とともに、下地作りも大切なポイントだ。錆や汚れを落としてから塗装を行う。
今回は、ガラス交換と塗装の軽い修理で、問題ない状況まで復旧できたので、二重断熱煙突に接続して、使ってもらうことにする。
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